僕は君が

ときめきの用例採集

下弦髑髏の捨天蘭+霧の関係

『髑髏城の七人 season月』お疲れさまでした。劇団☆新感線初のダブルチーム制で心底楽しませてもらえた。……はい、修羅天魔がもはや始まってるけれどしれっと月髑髏について書いていきます。私の修羅天魔初日はまだだからセーフセーフ。今は修羅天魔ネタバレを踏まないようにだけ気をつけてる。
とにもかくにも、ドクロ脚本の圧倒的ポテンシャル~~~!花鳥風月の企画が発表された当初、初演が90年の作品『髑髏城の七人』を今まで以上にさらにさらにこね回して一体何ができあがるんだろうと不思議だったけれど、その答えを鳥髑髏の改変、風髑髏の原点回帰、月髑髏の深化に見た。こんなに熱い展開がまだまだ可能なんだなぁと新感線ファンとして嬉しくなった。修羅天魔も始まったし、メタルマクベスも発表されたし、立ち止まらない新感線に恐れ入る。花鳥風月ぶっ通しでゲキ×シネしてくれないかな!みんなで応援上映しよう!鳥では天魔王とともにexactly!ってみんなで叫ぼう。以前の感想記事でも書いたこと。初演、97、アカ、アオ、ワカ、花、鳥、風、月ドクロの中で観客のハートに刺さるものはそれぞれ違っていて、こだわりゆえに宗教戦争みたいな危うさも孕んでいるけれど、そういうのをすべてひっくるめても壊れない強固なエンタメを新感線は築き上げているんだなぁ。拍手喝采するしかない!

下弦髑髏のマイ千秋楽は2/14公演。ライビュを含めて4回目。この公演で初めて、13,000円賭けたステージアラウンドガチャで当たりを引いた気がする。すでにチケットが届いている修羅天魔もこの付近の座席なので期待値高し。ただ、2/14マチネで蘭兵衛さんのお祝いを盛大に行ったって聞いて正直唇を噛み締めたよね。う、うらやましい……!蘭兵衛さんと極楽太夫の絡みがあったのか気になる。下弦髑髏キャスト陣は結構皆さんおっとりしているイメージで、その中でひとりチャキチャキしている羽野太夫が最高にキュート。蘭兵衛と極楽太夫のやり取りに浮かれつつも、そこまでしておいて髑髏城行くのか蘭兵衛ぇぇぇ!と毎度毎度心中穏やかじゃなくて、廣瀬蘭兵衛さんの掌の上で転がされていた。そんな下弦髑髏の捨之介と天魔王と無界屋蘭兵衛、そして霧丸の関係について延々語ってみる。公演によってそれぞれ変わっていたので、目にしたすべてをごちゃ混ぜにした感想(妄想)。

下弦のネタバレだらけの感想3つはこちら。

seshiki.hatenablog.com 

seshiki.hatenablog.com

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同じように書いた上弦の妄想はこちら。

seshiki.hatenablog.com

 

 

 

捨之介と天魔王と無界屋蘭兵衛
殿生前時は家来三人衆としてそれなりに交流はあり、もっぱら捨之介が二人を構っていた印象の捨天蘭。殿の寵愛については蘭兵衛一択だろうけど、捨之介はそもそもそういったものを気に留めていなさそう。殿に夢中だったと口にするけれど、天である殿の野望を叶えるために仲間たちと行動することに夢中になっていたような宮野捨之介。文化祭そのものより仲間と準備する前段階に熱中しているDKみたいな。何だこのたとえ。その野望のためにどれほどの血が流れるか気づいた後、宮野捨之介の中で殿への執着は一気に薄れた代わりに仲間たちへの執着だけが増したのでは。宮野捨之介って実はかなり子どもっぽいんじゃないのかな。自分の意見なら仲間の二人は聞き入れるはず、と無条件に信じ込んでいそう。それでいて、浮世の義理も昔の縁も三途の川に捨てたと思い込んでいるのだからたちが悪いぜ……!挫折も大して知らなさそうで、それがまた男っぷりのよさを高めていたのだろうけど、宮野捨之介は天魔王・蘭兵衛に拒絶される。お前には分からぬよの言葉と、振り下ろせなかった剣に自ら身体を突き刺されて。そこまでされて初めて捨之介は、自分たちは相容れないんだと絶望に陥る。この三人は、どうして分からないんだ、と互いに言い合うくせに対話をしやがらないので、そういうとこだぞ!と何度でも思う。いやもうほんと、そういうとこだぞ!兄貴分でありたい捨之介の包容力に、天魔王と蘭兵衛の二人が若干甘えているようにも感じられた。でも捨之介の包容力って、天蘭二人が捨之介を受け入れてこそのものなのに。


天魔王と蘭兵衛
殿生前時には絡みがなさそうな天蘭の二人。殿と捨之介の存在によってのみ交差していたような印象。天魔王が明智光秀を唆して本能寺の変を決起させた理由。下弦の天魔王はただただ純粋に、蘭兵衛の存在によって変化していく殿ではなく自らが理想としていた苛烈な殿(「天」)の描いていた野望を引き継ぎたかったのかなと。「価値の分からぬ者に蹂躙されるぐらいなら落ちた方がいい」は殿への思いと被っているように見えて仕方ない。今わの際に蘭兵衛の未来を気に掛けるような甘っちょろい殿では、どうせいつかは秀吉や家康に寝首を掻かれていた。そうなるぐらいなら、殿の価値を最も理解できている「人の男」がその前にお命を頂戴しよう的な。まあ、天魔王の発言すべて、真偽が分からないのでただの妄想。でも、天に向かって投げキッスするような素振り(あれは幻覚?スズヒロ天魔王さんしてなかったです???)もあったし、鎧にそうっと手を這わせていくあの仕草もだし、殿への思慕だけは間違いないはず。それなのに、一心に寵愛を受けていたはずの蘭兵衛は、殿の最愛の小姓という自覚がなさそうでね!あの時代で主君から命を重んじられるって凄まじいことだからこそ、天魔王はそんな蘭兵衛の命を駒のように扱いたかったのかもしれない。「お前もただの駒だ!」の咆哮がやり切れない。下弦の天魔王はずる賢い男というよりも殿への憧憬を煮詰めて狂気のバネにした男としてひたすらに観ていた。
一方の蘭兵衛は、あからさまに心情がゆらゆら揺れ動く繊細さによって、外道の道に堕ちてからの取り返しのつかなさを思い知らせてきた。無界屋蘭兵衛として生きていこうと耐え忍んできたはずなのに殿への思いがやっぱり振り切れない蘭兵衛。極楽太夫をはじめとする無界の女たちから愛情を注がれているのに、蘭兵衛の中には埋まらない空洞がある。俺ならもっと上手くやれるという自負を迸らせていた三浦蘭兵衛とは違って、廣瀬蘭兵衛は殿の死に付き従えなかった後悔の念が強い。その弱みを的確に突く天魔王はさすが人の男。下弦の天蘭は共犯関係というよりも、お互いがお互いの狂気のブースター的役割を果たしていた印象。 


捨之介と天魔王

矢印が絡み合えない捨之介と天魔王。上弦と下弦での大きな違いの一つは捨之介の振る舞いだと感じていて、宮野捨之介の兄貴分っぽさが濃ければ濃いほど終盤の自暴自棄っぷりが強烈。宮野捨之介はともすれば傲慢にさえところどころ思えた。それは多分、捨之介自身の正義を前提とした上で、天魔王に理解を求めているからなのかも。天魔王は捨之介とは別個の人間で、全く違う考えを持っているという事実を受け入れ(られ)ていない捨之介。「秀吉にくだれ」や「偽物の鎧でも役に立つ」という言葉を諭すように宥めるように口にした捨之介の心情を掬い上げることなんて、天魔王には絶対にできない。でも捨之介は兄貴分ポジションだったこともあってか、「できる」(=天魔王を止める)と心底信じて行動している。下弦の捨天蘭の方がお互いの違いを本質的には理解できていない感があって、それが宮野捨之介を追い詰めていってしまうのがたまらない。
天魔王から捨之介への感情はあまり掴めていない。影武者設定もなく、鳥髑髏のように復讐者設定もないので、天魔王がまず手に入れるべき駒として考えていたのはやっぱり蘭兵衛なんだと妙に納得した。鳥と風を経ての月として観ると若干新鮮でさえある。蘭兵衛に比べればさほど重視していなかったはずの捨之介が、天魔王の心身に圧倒的とどめを刺すという救いようのなさ。心身に、と書いたけれど何よりも折られたのは心。人心を掴んできた人の男が最後に自分の心を粉々にされるという結末。しかも、捨之介自身は天魔王のことを思っての言動なのだから、天魔王のライフはそりゃゼロにもなる。捨之介と分かり合える未来なんて、天魔王は一瞬も夢見てなかったような気がしてならない。捨之介の刀が振り下ろされたときに手で庇わなかったスズヒロ天魔王(早乙女天魔王は大体庇っていた)を観ているとそう思えた。相容れない二人。

 

捨之介と蘭兵衛
殿生前時、捨之介と蘭兵衛はなかなかに良好な関係だったのでは???ほんわかしてる!繊細な弟分をからかう兄貴分っぽい宮野捨之介。蘭兵衛の頭を撫でる捨之介を初めて観たときの衝撃は大きかった。ほんとに。下弦髑髏は驚くほどに蘭兵衛と極楽太夫の距離感が近いけれど、捨之介も負けていない。相手と視線を合わせなかったり肌に触れなかったり、これまでの蘭兵衛は壁を感じさせることが多くてそれもまた魅力的だったけど、無界の里に染まっている(ように見える)廣瀬蘭兵衛も最高。好み。狸穴登場の際に宮野捨之介の着物をはっと掴む仕草がものすごく好き。捨之介を頼っている感が出ていてよい。
月髑髏では、蘭兵衛の人斬りとしての闇にスポットが当てられている。地獄に戻る必要はないと霧丸が捨之介に諭される場面。下弦の蘭兵衛は自らにも思い当たるところがあるような表情をしていて、この演出がこれまた私は好きだった。霧丸は前身キャラクター・沙霧とは背景が若干違っていて、一旦は髑髏城から逃げるしかなかったけれど態勢が整ったら仲間の敵討ちに絶対向かうぜボーイになっている。この状況は本能寺を去った蘭兵衛とある意味似通っていて、下弦では特に蘭兵衛と霧丸の構図や演出に意味を持たせている(と思い込んでいる)。霧丸を諭す捨之介の言葉はそのまま蘭兵衛にも向かっている。過去に囚われた二人を諭す捨之介。また、蘭兵衛が霧丸を制止しなければ天魔王によって確実に殺されていたはずなので、捨之介の言葉だけでは踏みとどまれなかった二人だけど、霧丸は蘭兵衛によって強制的に踏みとどまれたとも見なせる。下弦髑髏では捨之介と蘭兵衛の二人というよりも、霧丸を含めた三人での関係性をあれこれ考えてしまう。

 

捨之介と霧丸
序盤の兄貴分らしさが素敵過ぎるので、その分一気にダークサイドに堕ちる宮野捨之介の死の濃さがとてつもないけれど、松岡霧丸にはそれを引き戻せるだけの光が溢れていてコンビのバランスが素晴らしい。しかもその光の源は、捨之介の言葉で得た力強さによるところも大きくて、松岡霧丸の成長が著しい。霧丸大好き。下弦髑髏の主人公は松岡霧丸だとさえ思っていて(捨之介は主人公を導くエース的キャラ)、薄っすらダークっぽい風味もある少年マンガらしさが好きだなぁと何度でも思う。月髑髏以前の捨之介が無意識での自己犠牲精神(自分の命に重きを置いていない)で行動していたとするなら、下弦髑髏終盤の捨之介はむしろ自分の命を積極的に捨てに行こうとしている。過去に囚われていて蘭兵衛と対のような存在で危うかった霧丸が、そこまで捨て鉢となった捨之介を救い上げるのが本当に晴れやか。百人斬りに霧丸が加わることも、明日を向いているという捨之介の剣への理解・信頼が感じられて、捨天蘭では見ることが叶わなかった絆を目撃できた。捨之介・沙霧での「影武者」を活かした対比とはまた違うベクトルで、霧丸・捨之介、霧丸・蘭兵衛の対比を楽しめた。お互いに見事に相手を救ってみせた二人。捨之介・霧丸については上弦・下弦通じて、この一言!

 

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