僕は君が

ときめきの用例採集

上弦髑髏の捨天蘭+霧の関係

もはや3月だけど、『髑髏城の七人 season月』お疲れさまでした。ライビュ込みで上弦4回、下弦4回観ることができて楽しかった。上弦髑髏のマイ千秋楽は2/18公演。初めて観た12月に比べて上弦髑髏は大分変化したなぁ。ハマっていた鳥髑髏同様、上弦髑髏の捨之介と天魔王と無界屋蘭兵衛、そして霧丸の関係について延々語ってみる。公演によってそれぞれ大分変わっていたので、目にしたすべてをごちゃ混ぜにした感想(妄想)。

上弦のネタバレだらけの感想3つはこちら。

seshiki.hatenablog.com

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捨之介と天魔王と無界屋蘭兵衛
殿生前時は、家来三人衆としてある程度の絆はあったように見える捨天蘭。殿がいた頃のパワーバランスとしては、贋鉄斎の呼びかけから推測するに蘭兵衛>捨之介=天魔王。殿の寵愛についてはぶっちぎりで蘭兵衛一択だろうな。鳥髑髏のように殿の考えを捨之介が語るシーンもないので、月髑髏では殿と捨之介の関係性は読めない。
Season月は上弦・下弦で分かれていて、どちらも欠けた月だ。月髑髏の始まりの地は安土城で、そこで天魔王という存在が生まれる。「人の男」が己を捨てて天魔王として誕生する経緯を描くのは、今回の月が初めて。これまでは天魔王としてすでに存在していた「人の男」が天を手に入れるために自らを削ぎ落とし一人称も変えて、愛おしげに鎧に手を伸ばす。月髑髏では冒頭から「欠落」と同時に、「誕生」が描かれている。月が欠けて、それでもまた満ちることを示すように。これまではすでに捨てたり欠けたりしていた登場人物たちばかりだった中で、「人の男」がまさに欠ける瞬間を描いてみせた月髑髏は画期的だったと、はじめて上弦髑髏を観たときの高揚感を今でも覚えている。まあ、上弦・下弦が発表された頃、上弦髑髏とか下弦髑髏とか言いづらすぎでは……?と散々言っていたんですけどね!電光石火の掌返しとはこのこと!月髑髏で最も沸いた斬鎧剣のあのくだりも、満ち欠けする月をモチーフとしたのでは???と若干思ってしまう妄想が激しいヲタク。


天魔王と蘭兵衛
まずは天蘭の二人。鳥髑髏のときもつらつらと考えていた、天魔王が明智光秀を唆して本能寺の変を決起させた理由。上弦の天魔王は、蘭兵衛によって変化していく殿を直視できなくて事に及んだのかなと。安土城で口にする「価値の分からぬ者に蹂躙されるぐらいなら落ちた方がいい」のセリフが最高にパンチが効いていてすき。最高到達地点を永久保存したい的な。穢される前に俺が穢す的な。的な。文字にするととことん病んでいる考え方でそれでこそ天魔王だ!(妄想)この思考が月髑髏の天魔王の行動原理なのではないかといつも考えている。ええ、いつも。こんなことをeverytime考えてのほほんと過ごしている。天魔王は殿から直々に遺言を残されることを望んでいたのかな。ああ、殿の罪作りなことよ……!燃え盛る本能寺の中で殿に付き添っていたのに、殿が言葉を遺す相手はその場にいない蘭兵衛のみ、というのが痛い。切ない。しかも、今後の日の本についての懸念事項などではなく、蘭兵衛個人の未来だけを気に掛けて思い遣った言葉。殿の眼中に一切入っていない天魔王。
天魔王と蘭兵衛は殿の衣鉢を継ぐ存在として「自分」以外を許せない。俺ならもっと上手くやれる。そのことでのみ通じ合えている二人。根っこが同じ。秀吉や家康のような価値の分からぬ者たちに殿の後継として思い上がった行為をされるなら自らが手を汚した方がいい、という思考。ただ、天魔王が八年も前に行動に出ていたのに比べて、蘭兵衛はかなり燻らせている。極楽太夫たちの存在が引き止めていたというより、秀吉たちを出し抜く勝ち手が見えていないがために蘭兵衛は何も行動できなかっただけのように思える。だって三浦蘭兵衛、いつだってヤる気満々……!そんな中である程度の戦力を持ち、殿の遺言まで教えてきた天魔王は、蘭兵衛にとってはカモネギのような存在だったのでは。お互いに利益をもたらす共犯関係の二人。共依存に陥りそうで陥らないのが上弦髑髏の天魔王と蘭兵衛の持つ強さに見えた。

 


捨之介と天魔王

圧倒的すれ違い。ここまですれ違いがあからさまだった捨之介と天魔王っていたかな!?というか、月以外のドクロではこの二人の目指すものはそもそも明確に違っていて、一部のドクロでは捨之介が復讐者という設定さえ与えられるほど。すれ違うどころか、平行線が当然だった。それが月髑髏では、捨之介も天魔王も互いの「理解」を欲しているように見えた。若いキャスト陣が集結した上弦髑髏でこういう関係を描くってある意味地獄。相手の無理解を切り捨てることもできず、どうして分からないんだと言い合う。これが若さゆえの衝突でもあって、ワカドクロよりもさらに青臭いドクロだなと。下弦では宮野捨之介が少し兄貴分っぽさを出すので、この辺りがガラッと違って見えるのも面白い。上弦の福士捨之介は、天魔王との違いを理解しつつも必ず説得できるはずという信念が見える。
終盤に捨之介が口にする「偽物の鎧でも役に立つ」という言葉。これを口にできるのは月髑髏の捨之介しかいない。これまでの捨之介ではこうした言葉には至れない。だからこそ初めて月髑髏を観たときに、こういうセリフを捨之介に言わせるのか!とすごく興奮した。幾分抑えた声で噛み締めるようにそう伝えた捨之介はまだなお天魔王に道を示している。捨之介は天魔王を物理的にも心理的にも切り捨てられない。でもそれこそが天魔王を追い詰める一手であり、二人が決定的に分かり合えないことを示すシーンだった。その一方で、この二人は「捨てる」という同じ行為をしていて、結局は根っこが同じはずだとも思える。「人の男」は自らを捨てて、天魔王と名乗った。一方の捨之介自身も本来の名前を捨てて「捨之介」と自称している。はじめから、己を「捨てる」ことだけ共有できている二人。何なの。苦しい。ただ、捨之介はそこから掬い上げる(拾う)ことができる人間なので、やっぱり二人は違う道を進まざるを得ない。天魔王が拾わなかった命を、捨之介は拾うんだ。

 

捨之介と蘭兵衛
殿生前時の関係が上弦髑髏の中では一番読めない二人。鳥髑髏のときも同じことを書いたなぁ。そもそも蘭兵衛なる男がスペック盛りだくさんな上に情緒不安定だから、ドクロで最も謎な男だと花鳥風月すべて観てもいまだに思う。その不安定さが観客を惹きつけるんだろうけども。しかも月髑髏では、捨之介の「今度は間に合わせる」というお馴染みセリフはあるものの、本能寺の変に間に合わなかったくだりはさほど語られていない。捨之介から自責の念は多少感じるけれど、蘭兵衛に対して負い目があるような素振りはほぼ見えなかった。むしろ、殿の死に際にお互い立ち会えなかったからこそ、天魔王を制止する今回は必ず共に行動しようという仲間意識が強かったような。捨之介は完全に、天魔王を止めるためのパートナーとして蘭兵衛を信頼している。喪われたはずの青春をまったく捨て切れていない捨之介と、「殿」以外のものは捨て去り外道の道に突き進んだ蘭兵衛。この辺り、捨之介も蘭兵衛もすれ違いがはなはだしい。
月髑髏では、蘭兵衛の人斬りとしての闇にスポットが当てられている。上弦の三浦蘭兵衛は人斬りとしての己に誇りを抱いているようにさえ見えて(殿の役に立っていたという自負?)、結局はその腕を振るわずにはいられなかった。俺ならもっと上手くやれる。この自負を迸らせていた三浦蘭兵衛。そのオラつきが癖になる。三浦蘭兵衛は世が世なら天下獲っている感ありまくり。地獄に戻る必要はないと霧丸が捨之介に諭される場面。下弦の蘭兵衛は自らにも思い当たるところがあるような表情をしていたけれど、私が観ていた限り、三浦蘭兵衛は表情を変えていなかった。地獄こそが三浦蘭兵衛の良しとする場なのか。もしくは、霧丸の境遇にまったく自分を重ねていなかったのか。外道の道に堕ちたとはいえ、三浦蘭兵衛は殿への信念を貫き通したのかもしれない。それが殿の望んでいない忠義であろうとも。殿に夢中という青春を過ごした仲間と、「殿」そのもの。この二人では大事に思うもののズレが大きな溝となった。その溝を哀しむ捨之介とは対照的に、蘭兵衛は「貴様には分からぬ」と切り捨てる。蘭兵衛のこの容赦のなさ、天魔王に通じるものがある。捨之介では持ちえないそれが天魔王と蘭兵衛を近づけ、二人と捨之介の断絶を決定的にするってツライ。

 

捨之介と霧丸
沙霧大好きマンなので、性別を改変して一体どうするんだ?と観劇前は不思議だった月髑髏。沙霧が女であることを活かして何とかオールオッケーにしている力技がドクロではところどころあるから、霧丸になることで多少の齟齬はまあ正直感じる。対になっている捨之介と沙霧の初期設定が美しすぎたんだ……。それでも、霧丸が成長の末、死の淵に行ってしまった捨之介を引っ張り上げてみせるのは最高すぎて、これぞ同性の成せる技かと震えた。ほのかな恋愛要素なんて一切絡ませずに、「相手を助けたい」という真摯な気持ちだけでやり遂げる心意気。やったね霧丸!百人斬りへの霧丸参加について、初見では、ええ……何だかんだ言って殺しに加担させるのか……と身も蓋もないことを一瞬思ったけれど、あれも捨之介のスタンスの強調だったんだなと。明日を向いている捨之介の剣。霧丸が加わることで、天魔王・蘭兵衛には理解されなかった捨之介の行いがやっと報われる。かつての仲間には理解されなくても、霧丸が理解してくれているという胸アツ展開。また、そうして捨之介の考え方を分かってくれた霧丸だからこそ、思い切り過去を向いた挙句に死にまっしぐらになりかけた捨之介を止めることができる。ああ泣ける。お互いに見事に相手を救ってみせた二人。

 

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