僕は君が

ときめきの用例採集

馬鹿にされない"犯人"たれ──『熱海殺人事件 CROSS OVER 45』

昨年のNEW GENERATION以来の熱海殺人事件!ネタバレあり感想。『熱海殺人事件』にネタバレという概念が存在するのかは謎だけども。去年の感想はこちら。強制ゲスト(?)の細貝さんが私物眼鏡を割ってしまうという悲運が強烈に印象的。

seshiki.hatenablog.com

 

場所は紀伊国屋ホール。あの妙な座席も相変わらずで、ずり落ちそうになる感覚にはいまだに慣れない。今回は通路側の席だったので、去年同様の大山金太郎登場シーンには沸いた。ただ、音楽に詳しくないから登場時の歌がピンと来なくてぽかん。あれはα-X'sの曲なのだろうか。後で歌詞検索しようと思っていたのに、他の使用楽曲ラインナップを記憶しているうちに忘れてしまった。ぽんこつな記憶力。
使用楽曲は白鳥の湖よろしく哀愁、め組のひと、ハクナマタタ(ライオンキング)、前前前世大声ダイヤモンドなど。前前前世はもしかすると日替わりかも。場繋ぎのために歌わされたゆりあちゃんの歌声に、マジかよ……!?と言わんばかりの男性陣の反応に笑った。終演後に、あの前前前世ってガチ?という会話があちこちから聞こえたけれど、ゆりあちゃんはガチです。順位ネタはあるだろうと思っていたものの、まさか音痴ネタでまでイジられるとは!ハクナマタタは雑極まりなくて、お腹抱えて笑った。味方さん曰く、大西ライオンさんから借りたらしい。大事な小道具なのにいいのか!そして一番熱狂したのは、味方さんの歌う大声ダイアモンド~~~!「大好きだ 君が大好きだ~」と歌いながらはけていく味方兵衛部長刑事最高。「部長はあの曲知らないのよ!」と後を追ってあげる水野ゆりあ婦警も最高。この曲、AKBグループオタ以外大丈夫?分かります?恋するフォーチュンクッキーとかの方がいいんじゃないだろうか、と勝手に心配してしまう元AKBオタ。この曲なに?と怪訝がられるのがいたたまれなくて過敏。だから、大山金太郎の登場曲が分からないのが妙に申し訳ない。大声ダイヤモンドはAKBの比較的初期のヒット曲。世間一般的にあの時期のAKB曲が有名なのか、振りコピまでしてた元オタとしてはもはや判断できない。一つの沼に浸かるとよくある現象。常識だと思っていたら大多数は知らない、みたいな。その逆もしかり。AKBといえば、め組のひとで恋チュンの振りが入っていた。全員かわいいな!


舞台感想としては、『熱海殺人事件』はやっぱり好みだなと再確認。無意識にニヤニヤしてしまうぐらいに、独特の美学に裏づけされたセリフがすき。早口長回しのセリフがある舞台に惹かれがち。そもそも、大好きな劇団である新感線がつかこうへい氏のコピー劇団として当初は大人気だったそうなので、回りまわって源流に辿り着いたような心地。殺人事件の犯人を特別な犯人へ仕立て上げていくなんてあらすじだけ読むと奇想天外すぎるのに、木村伝兵衛部長刑事やその他のキャラクターによって結末まで納得できるからすさまじい。脚本の持つ力強さよ!

演出。大音量で流れるチャイコフスキー、目を逸らしたくなるほどに眩しい照明、息継ぎの間もなく機関銃のように撃ち出されるセリフ。『熱海殺人事件』に去年触れたばかりの自分でも、熱海だ~~~!と開演の一瞬で高まった。熱海に備えて耳のチューニングをしていたはずが、一瞬でも油断すると早口長回しに置いてけぼりにされてしまう緊張感。それでいてメタ発言もあるから振り回される。あ、今の○○ネタか!と数秒後に気づくことも。伝兵衛シートについては去年より過激になっていたので度肝を抜かれたけれど、まあ脚本通りといえば脚本通り。『熱海殺人事件』初演であの演出を目の当たりにした観客は驚いただろうなぁ。
去年と変わらず内輪ネタのメタ発言は多め。AKBグループに多少なりとも興味がなければ伝わらないのでは、と思う掛け合いもあり。製作側は、特定キャストのファンへのサービスだともう割り切ってるのかもしれない。観客側にもその割り切りを求めているのかな。ただ一応、客層に合わせて小ネタは変更されてはいる。刀剣乱舞テニミュネタがあった去年と違って今年は一切なし。その代わりAKBやノンスタネタをどどんと投下。ゆりあちゃんの順位や音痴っぷり、石田さんの顔イジリやお子さんが産まれたばかりのパパとしてのエピソードなど色々ぶっこまれていた。2/20は石田さんの誕生日当日だったので集中砲火に遭う場面も。味方さんや匠海さんは、その二人ほどはイジられてなかった印象。お前だけは品良くしてくれと言われたり(味方さん)、歌唱力についてイジられたり(匠海さん)などはあったけれど。

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キャスト別感想。
味方良介さん。木村伝兵衛部長刑事。生執事ぶりの味方さん。タキシード、蝶ネクタイ、撫でつけた黒髪。味方さんのこの姿を目にしただけで、熱海だ!と反射的に高まる。つくづく感じるのは、味方さんの圧倒的な滑舌のよさ!早口長回しで膨大な量のセリフがある舞台でここまでストレスを感じさせない発声って素晴らしすぎる。元々喉も強いのかな。今年は席が近めだったので去年より色濃い青のアイシャドウもはっきりと拝めた。青の目元で見得を切るのが恐ろしくかっこいい。眼力が半端ない。目が合ったら蛇に睨まれた蛙状態になると断言できる。"立派な犯人"なんてのたまう木村伝兵衛にはかなり独特の美意識がある。味方さんの中で美意識が完全に落とし込まれているから、その説得力によってこちら側もあっという間に呑まれる。
他キャスト陣が去年とは違うので、味方伝兵衛部長刑事のあり方もやっぱり変化して見えた。水野ゆりあ婦警が大人の女性というより伝兵衛に(比較的)素直に向き合う後輩タイプだから、二人のイチャイチャが可愛さの極致。いいぞもっとやれ。水野ゆりあが歌わされたりクイズを投げかけられたりしているときは適度な位置で見守っていて、保護者っぽくさえある味方伝兵衛。その上で、酸いも甘いも知ったような大人の石田留吉、幼さと無防備さが押し出されているα-X's金太郎との関係性もあって、去年よりも色気が壮絶に増していた。花が舞台に飛び散るあのシーンの美しさよ!額縁にでも入れて飾っておきたい!金太郎が幼めだからかな、同年代で集まっていた去年とはまた別格の凄み。十分に神々しさを感じていたつもりだったけれど、今年の熱海を観てから前回公演を思い出すと、去年の味方伝兵衛部長刑事にはまだ隙も可愛げも感じられたなと。去年も今年もどちらもよい。「俺より目立つな!俺を立てろ!俺より前に出るんじゃねえ!」と「抱きに行きますので」(「抱きますので」かも)のセリフが特にすき。「抱きに行きますので」のセリフは本来のつか脚本にはないけれど、味方伝兵衛部長刑事が口にするとすごく似合っていて、これはもう伝兵衛部長に沸くしかない。


NON STYLE石田明さん。富山から来た熊田留吉刑事。スタイルがよい!!!何だあのスーツ姿!!!石田さんのああいうスーツ姿を初めて生で見た。既婚者感溢れてていいよいいよ。アドリブ満載の舞台でも収拾がつかなくなるほどには寄り道に逸れなかったのは、軌道修正に長けた味方さんや石田さんたち匠の技のおかげかも。ロシアンルーレットピストルのくだりはあるものの、石田留吉はクレイジーさ抑え目だと何故か感じられた。石田留吉の雰囲気として、境遇を恨んで名誉に食らいつく野蛮さよりも、富山に捨ててきた恋人への情が常に色濃く出ていた気がする。石田留吉は味方伝兵衛をはじめとして周囲に振り回されることが多めだからそう感じたのかも。そういえば、大山金太郎との掛け合いが去年よりも減っているような……?
2/20は石田明さん誕生日。味方さん指揮の元、観客も含めてハッピーバースデーを歌ってお祝い。ゆきえさんが登場したり、石田さんの奥様から入手したネタを暴露されたり。ゆきえさんはシャインハッピーゆきえという芸人さん。暴露ネタでものすごく微笑ましかったのは、奥様と俳句でやり取りをしてるというお話。さすがは愛妻家石田さん!誕生日ということで渡されたプレゼントはまさかのあのブランド。カーテンコールではタキシード姿での登場もあって、石田さんお祝いムードに最後まで包まれていて最高。石田さん曰く、プライベートネタを暴露されてかなり動揺していたそうな。


α-X's匠海さん。容疑者・大山金太郎。Wキャストで、2/20公演ではα-X's匠海さんだった。水野ゆりあ婦警の静岡の婚約者・タツヒコはもう一人が出演する模様。敦貴さんがタツヒコとしてかなり自由に振舞っていて笑った。Wキャストの贅沢な使い方。大山金太郎のぶっ飛んだ登場シーンはもはや有名なのか、開演前からそわそわしていた人も多くて人気なんだなーと。黒のキャップにサングラス、オレンジのつなぎも着こなしていて、薔薇一輪を観客にプレゼントするのもスマート。都会的。すぐ後に見せる素の姿との落差もよい。刑事たちに散々振り回されたかと思えば自ら振り回しもし、終盤には浜辺でのアイコちゃんとのシーン再現などもあって、大山金太郎は感情の出力と振れ幅が目まぐるしい。翻弄される姿が似合っているなぁと中盤まで思っていたんだけど、アイコを演じるゆりあちゃんとの浜辺シーンが一番すき。二人のあどけなさによって現実とのズレが視覚化されていた。あの頃にはもう戻れない、というリアル。


木崎ゆりあさん。水野朋子婦人警官。ゆりあちゃん、予想以上によかった~~~!これまでマジすかでしかゆりあちゃんの演技を見ていなかったけれど、水野くんみたいな役もできるんだ!キリリとしたパンツルックも似合ってる!去年の文音さんのようなお色気漂う水野とは違っていて、味方伝兵衛に素直に体当たりしていく感じ。「好き!大好き!離れたくない!」のくだりでは真正面から味方伝兵衛に体ごと飛びついていてまさに体当たり。何あれ可愛すぎでは……???バカップルかよ~~~!ただ、溢れんばかりの可愛さはあるものの、味方伝兵衛と対等に渡り合えるほどの強かさは少々足りないので、伝兵衛の元に残る結末もありえるんじゃない?と思ってしまった。強気に意固地になっている水野ゆりあを、味方伝兵衛なら丸め込めそうな雰囲気。一方で、そういったあどけなさの残るゆりあちゃんとアイコの相性はすさまじくよくて、浜辺で二人が語り合うシーンでは胸が締めつけられた。ふるさとにもはや戻れないがゆえになおさら田舎への拒否反応が強まっていくように見えた、ゆりあちゃん演じるアイコ。都会に染まるしかもう道がないという切迫感が痛い。
日替わりだろうクイズネタ。2/20公演では「三権分立とは?」と質問されて、「え、数学……?」と答えたゆりあちゃんはさすがだった。おいおいマジか、と一気にざわつく男性キャスト陣。マジだぞ!どういう変化球が来るか分からないんだぞ!少し前にゆりあちゃんも誕生日だったとのことで、石田さんへのプレゼント贈呈の後に、今度は石田さんからゆりあちゃんへ鍵盤ハーモニカのプレゼント。久しぶりに見た、あれ。これで歌が上手くなってください、ということらしい。舞台を観ていて、ゆりあちゃんの強みは多少のことでは動じないメンタルだなと。男性キャスト陣が好き放題に下ネタやメタ発言で盛り上がっていても、すっと水野やアイコとして存在できているのがよかった。声も通って聞き取りやすいし、将来の夢である女優の道に突き進んでほしい。

 

熱海殺人事件』の脚本は無料で公開中!

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