僕は君が

ときめきの用例採集

劇団☆新感線『髑髏城の七人 season月 下弦の月』(12/13)

劇団☆新感線『髑髏城の七人 season月 下弦の月』の12/13ソワレ公演の感想。上弦髑髏の一週間後にようやく下弦髑髏も観てきた。下弦髑髏のネタバレしかないのでご注意を。これまで書いてきた月髑髏関連の記事はこちら。

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上弦髑髏のネタバレ感想はこちら。月髑髏全体のストーリーについての感想はこちらで結構書いたかも。

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まさしく関東荒野であるステージアラウンド東京へ初めて車で向かった。劇場から徒歩1分の場所に駐車場(三井のリパーク)があり、5時間近く預けてたしか1,200円なり。ステージアラウンド東京観劇での割り引きクーポンがあればいいのにな。今回は一人観劇じゃなく同行者がいたのだけど、こんなところに劇場あるんだ……と空き地に聳え立つ髑髏城に衝撃を受けていた。何度か髑髏城に登城している身としてはその反応が懐かしい。それにしても、冬の髑髏城登城寒すぎでは……?劇場前のベンチの使われなさよ!観劇後は熱狂しているので帰り道の方がさほど寒く感じないというマジックも味わえる冬。
上弦髑髏で初めてサイド席を体験した後でのS席での観劇だったけど、サイド席も悪くないかも……?今回の下弦髑髏は中央の中央のS席でまあまあ視界を遮られることもなく観ることができた。でも、前方の方の頭で観えない箇所ももちろん(……)多々あって、これならキャスト陣が目の前を駆け抜けたり無界の里襲撃や荒武者隊の動きを近くで拝めるサイド席を選択するのもアリでは……と思えてきた。そうして、この日は21:55頃に終了。今のところ21:50~55の間に終演する感じかな。

舞台全体の感想は上弦髑髏のときに、面白い~~~!と散々語りつくしたので、現時点で感じている上弦と下弦の違いについて。この下弦髑髏の数日後に二度目の上弦髑髏を観たところどえらい変貌を遂げていたので(主に早乙女天魔王)、「現時点での」雰囲気の違いなどを記録しておきたい。これからますます変わっていくのかと思うと楽しみ!下弦髑髏も12月にもう一度観に行く予定。(※この記事を投稿する頃にはすでに行っている)
超ワカドクロの名にふさわしく運動量多めで少年マンガっぽいところは変わらないけれど、上弦と下弦ではやっぱり色々と違っていてダブルチームの面白さを思い知った月髑髏。どちらかしか観ないという場合でも、1月にLVもあることだし、もう一つの月髑髏も観てみたらさらに楽しめるはず!こんなに違うのか~~~!と麻薬めいた面白みがある。上弦、下弦、上弦、下弦の繰り返しをしている人間が、麻薬めいた面白み、なんて言うと危険な感じがしますね。月髑髏はシャブか。上弦髑髏では主人公・捨之介を核として因業因縁が絡み合う雰囲気だったけれど、下弦髑髏は主人公・霧丸、エース・捨之介という印象。少年マンガでも過去にいわくありそうな年上キャラクターって人気ですやん。NARUTOのカカシ先生や血界戦線のスティーブンとか。その他にも天魔王は「弱さ」を露呈させているかギリギリまでひた隠しにしているかが大きく違っていたし、蘭兵衛は上弦・下弦で全く別ベクトル向いているし、他キャスト陣も結構違っている。詳細はキャスト別感想で書く予定。

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キャスト別感想。

宮野真守さん。捨之介。アニメ『デスノート』の夜神月宮野真守さんを知ったのがもう10年ぐらい前……?二次元ヲタクしてると必ずどこかで宮野さんの声には遭遇するだろうと思うぐらいに有名な声優さんという印象。この前のvs嵐でめっちゃくちゃ面白い人なんだな!??と初めて知った。当然のことととして片付けるのはもったいなさすぎるのでまず書くなら、とにもかくにも声がいい!声の演技に凄味がありすぎる!特にお気に入りなのは、髑髏城で蘭兵衛に不意に斬りかかられて以降の呻き声。吐血しそうな咳き込み方も良い。捨之介が窮地に追いやられたのが劇場後方の客でも明確に理解できるほどに声の弱りっぷりが半端ない。この素晴らしすぎる声で最後の最後の決め台詞「柄じゃねえよ!」を笑顔でからっと言ってのけるのがドストライクすぎて、しかも笑い声も上げていて、宮野捨之介好き……となった。続いて体勢。意識的にすごく腰を低く落とされているのか、その結果おみ足が剥き出しすぎる。焦る。太腿からくるぶしにかけての曲線が美しい。花風月ともにどの捨之介も揃いも揃っておみ足が美しいって何事なの。あ、鳥捨之介はそもそも着流し姿じゃないから対象外にしておく。あの忍び装束も大好き。宮野さんには何故か「洋」のイメージを持っていたのだけど着流しの着こなしも素敵。で、殺陣。殺陣はもう少しスピード感が出るとさらに滾るけれど、ここぞ!というときはバッチリ決まっているので満足度高し。惜しむらくは、せっかく宮野真守さんが捨之介なのだから歌パートもあればよかった、ということぐらい。
実年齢も関係しているのか、宮野捨之介は福士捨之介よりもアニキらしさが強かった。気のいいあんちゃんで、「傘を差し出す男」というフレーズがよく似合っている。霧丸への態度もさることながら、蘭兵衛の頭を撫でるというとんでもない爆弾が!霧丸や蘭兵衛など守りたい対象への行動が逐一お兄ちゃんっぽくて自然とアニキ感が滲み出ている宮野捨之介。「今度は間に合わせる」のくだりで蘭兵衛の頭を撫でるって本当にもう何事。ちなみに、「今度は間に合わせる」の意味については上弦・下弦ともに特に触れず。月髑髏の捨之介は本能寺の変に間に合わなかったという設定なのか不明。その他には、無界の里の女たちとのダンスシーンでさらりとスキンシップしていて若干のスケベ要素もあり。そういう感じの捨之介ってもはや久しぶりの域。一瞬でころりと好きになったのは、「髑髏城の七人」というタイトルロゴが出てきた直後のあの不敵な笑み!恐るべきかっこよさ。その上で多少の隙というか無防備に感情を見せる部分もあって、無界の里で狸穴二郎衛門を見かけた瞬間のうわマジかよというあからさまな反応が面白かった。コミカルな演技が分かりやすい。
キラキラしている福士捨之介は地の男の頃も汚れ仕事をしていなさそうと上弦髑髏の感想で書いたけれど、宮野捨之介はしていそう。清濁併せ呑んでいる雰囲気がある。ただ、だからこそ、霧丸の手助けありでの百人斬りが下弦髑髏では少しだけ違和感だったかも。いくら霧丸本人が捨之介の剣は未来を向いていると承知していて、生き残るためには戦わなければならないという会話を以前にしていても、汚れ仕事を経験していそうな宮野捨之介が年若い霧丸に百人斬りの手助けをさせるかな、という違和感。霧丸が捨之介の語る未来のために手助けをしたいと申し出るのは理解できるけれど、それをあの捨之介が承諾するんだろうか。「お前を人殺しにしたくない」の言葉と、ドクロの見せ場である百人斬りとの整合が難しい。上弦は上弦で、福士捨之介がそもそも人を斬らなさそうなので、全員峰打ちか何かなの?という違和感が百人斬りのときはあった。上弦・下弦ともに、天魔王との対決後の方が百人斬りをしでかしそうな鬼気迫る感じがある。


鈴木拡樹さん。天魔王。2.5次元の申し子という評判を聞いてはいたものの初めて生で観る鈴木拡樹さん。vs嵐のときの好青年っぷりが最高だったので勝手に好印象を抱いている。先に観たのが上弦髑髏の早乙女天魔王(12/5時点)だったので、お遊びの効いた天魔王にかなり蕩けていたのだけど、冷酷無比な鈴木天魔王には張り手を食らわされた気分。腹の底から出しているような声で、宮野捨之介と対峙しているときも全く遜色なく聞き取れる。音響や座席の問題なのか、ステージアラウンド東京では音楽が爆音で流れる際に台詞が聞き取りづらくなることがあるけれど、冒頭の天魔王オンステージでもちゃんと声が聞こえる。「六欲天をご存知か」の傲岸不遜な言い方がこれまたよい。ご存知か、の冷え切った声のトーンがたまらない。その後の鎧ダンサーズを従えてのダンスも流れるようだったし、殺陣もキレがあるし、鈴木拡樹さん恐るべし。カーテンコール最後の最後でのふんわりした笑顔は一変して可愛らしい。憑依していた天魔王の仮面が剥がれるのを目撃したような心地。
鈴木さんがパンフレットで触れられていた通り、彼に付き従う者も二万人いたのだという忘れがちな設定を思い出させてくれる天魔王だった。織田の残党や秀吉への反乱分子の寄せ集めかもしれないけれど、それでも二万人が天魔王の元にくだっている。鈴木天魔王のカリスマ性を表す象徴とも呼べるのが、生駒の存在だったと思う。上弦と下弦では生駒の演出が全く違う。上弦の生駒が早乙女天魔王に対して母性のような包容力を見せる一方で、下弦の生駒は鈴木天魔王に夢見がちかとも思えるほどの乙女な反応をする。天魔王への声がいちいち可愛い。心酔とはこういうことか。贋鉄斎の庵を襲撃するシーンでも上弦よりコミカルな要素が多く、「潔癖だから鍋も皆でつつけない」や「生駒、おこだからね!」なんて言ったりする。これには笑った。そんな生駒が、自らを斬りつけてきた天魔王に真意を告げられた後、甲高い声で笑うのがね……!そうして天魔王の刀に自ら喉を突き刺して果てるって、うわ~~~性癖に突き刺さる~~~。しかもそんな生駒に対して天魔王ってば、理解が遅い、主の手を煩わせやがって、とまで思っていそうな表情を見せていて、上弦・下弦ともに天魔王と生駒の関係が沼。考えれば考えるほど深みに嵌る沼。
ここまで観ていて、早乙女天魔王と比べると一貫して苛烈で冷酷無比っぽいと思っていたところに、蘭兵衛とのシーン。ここから転がり落ちるように、鈴木天魔王の弱さが曝け出されていく。上弦では蘭兵衛に対して殿への思いを吐露する姿に心打たれたけれど、下弦ではその後の蘭兵衛に庇われた直後の表情にヤられた。「蘭丸、貴様っ!」と口にしたときの、信じられないものを目にしたような表情。驚愕の後一瞬歪んだ顔。あんなの何度でも見たくなるに決まってる。チケット買い足すしかないか。それから捨之介によって鎧を剥ぎ取られていく天魔王だけど、鈴木さんは本当に線が細くて華奢に見える方なので、鎧を奪われた後の虚ろな抜け殻のような肉体が一層哀れで胸に迫る。金ぴかの鎧を奪われて黒の衣装で呆然と座り込む天魔王の姿は、冒頭に安土城で鎧を手にして一人称まで変えた人の男よりもさらに小さく見えた。安土城で自ら天魔王になるべく行動したとき、人の男はすでに天を侵していたんだろう。明智光秀を唆して自らが崇めていた殿という絶対的存在を天より引き摺り落とした後なのだから。それと、花鳥風月どの天魔王にも言えることだけど、最後の落ちる瞬間が本当にたまらなく綺麗……。早乙女天魔王は捨之介から目を離さずに落ちて行く気がした一方で、鈴木天魔王は天を仰ぎ見つつ落ちて行ったように感じられた。殿が亡くなって自由になったと解釈する捨之介へ激しく反論していたし、天魔王はいつまでも天に囚われていたかったのだろうな。天魔王と捨之介の相容れなさが凄まじい。


廣瀬智紀さん。無界屋蘭兵衛。壊れ物みたいな美しさ。儚げな廣瀬蘭兵衛いいよいいよ!この解釈好み!ハイローでマルコ役をされていたときから思っていたけれど廣瀬さんは端正なお顔だ。ハイロー舞台挨拶で見ただけの印象としては結構控えめで、他キャスト陣に積極的にマイクを回してあげていて優しそうなイメージ(後列は複数人で一つのマイク)。男性的でオラついている三浦蘭兵衛とは全く違っていて、上弦と下弦で最も違うベクトルを目指しているのは蘭兵衛かもしれない。基本的に穏やかで優しげな語り口の廣瀬蘭兵衛が声を荒げるのは殿関係が多く、殿の衣鉢を継ぐなんて考え自体許せなさそう。でも、無界の里の女たちの前ではそういった感情の昂ぶりを抑えていて、皆と仲良さそうな廣瀬蘭兵衛。楽しげにお喋りしていた。すごくツボだったのは、いん平が女たちに向かっていったときに両手を広げてガードしていたところ。蘭兵衛が無言の威嚇オーラ以外で女性たちを守るのって珍しい気がする。蘭兵衛が無界の里の女たちを守った~~~!と思わずニヤニヤしてしまった。あ、三浦蘭兵衛のときも若干感じていたけれど、月髑髏の蘭兵衛の衣装のカラーがどうも好みではない。荒れている成人式で着られていそうなオラついたパープルやグリーン……。もう少し落ち着いた色合いがよかった。
一幕~二幕冒頭までの廣瀬蘭兵衛は儚げな印象が強く、無界屋蘭兵衛として成し遂げた仕事に自信もなさそう。捨之介にいい里だと褒められたときの所在なさそうな表情といったら!自分が思っているより皆を思っている、と極楽太夫に言われてもなお自己認識は改まらなかったのだろうな。無界の里の皆のことを「この子たち」「あやつら」と優しい声で呼ぶ廣瀬蘭兵衛だからこそ、髑髏城に向かう決意をしたのは極楽太夫たちの命乞いのためなんだろうと心から思えた。今回、「あやつらがいたからここまで生きてこれた」じゃなく「あやつらがいたから生きてきた(生きていた?)」という台詞で、重い、重いよ……。「生きてきた(生きていた?)」って「生きてこれた」よりもさらに情と感謝が深く感じられる気がする……。ただ、その言葉を天魔王に告げる前、一幕最後に髑髏党と戦っているときに、早くも綻びは見えていた。そう感じるぐらい、「殿を捨てて」の一言に痛いほど自責と後悔が滲み出ていた。その綻びを「信長公の遺志」という言葉で的確に突いた天魔王はやはり人心を操る人の男なんだなと。
下弦髑髏を観ていて気がついたのは、蘭兵衛と霧丸の対比。「髑髏城から逃げ出して外に向かって走ってんだ、今更地獄に戻ることはない」と霧丸に言い聞かせる捨之介。その言葉を聞いているときの蘭兵衛の表情!髑髏城から逃げ出した霧丸、本能寺より去った蘭兵衛。元の場所は地獄だから戻ってはならないと理解している捨之介は諭すけれど、敵討ちと後悔に囚われたままの二人にはなかなか届かない。髑髏城や本能寺から逃げ出す様子は今までのドクロでも描かれたことがないけれど、蘭兵衛と霧丸は逃げ出さざるを得なかったんだろう。だからこそ二人とも、捨之介に諭されてもやっぱり髑髏城に向かう。地獄に戻ってしまう。そうして蘭兵衛は死に、霧丸は生き残る。今回口説き前に霧丸が乱入してきたことで蘭兵衛によって霧丸は制止され、結果的にはそのおかげで命拾いする。陥落直前の蘭兵衛に止められなかったら、確実に天魔王に殺されているに違いない。似た境遇の二人の生死を決定的に分けたのは、蘭丸に戻る寸前の蘭兵衛の情なのかもしれない。極楽太夫の言う通り、自分が思っているより皆を思っていたんだ蘭兵衛は……と勝手な解釈をして悶えてしまうヲタク。まあ、霧丸はその後結局蘭兵衛自身に殺されかけて自らの力で逃げるから結果論に過ぎないけども。
廣瀬蘭兵衛は最後のカーテンコールも素晴らしかった。極楽太夫をエスコート!!!手を取り合う二人可愛い!!!極楽太夫をエスコートするなんて何そのジェントル蘭兵衛……。微笑みかけながらスマートに手を差し出していてジェントル……。ものすっごく拍手した。廣瀬蘭兵衛は一幕~二幕冒頭までの蘭兵衛時期が好みで、三浦蘭兵衛は二幕での振り切った蘭丸時期が好み。どちらもよいなー。


木村了さん。兵庫。須賀兵庫よりもアニキっぽさがある兵庫。荒武者隊でのポジションを考えると、須賀兵庫は周りが守り立ててあげたくなる愛すべき兵庫で、木村兵庫はその度量に周りがついていきたくなる男らしい兵庫。先日観た須賀兵庫たちは15の夜を歌っていたけれど、木村兵庫率いる荒武者隊は勇気100%を歌いながら去っていってた。 木村兵庫の方が15の夜歌いそうな雰囲気。定番のくんろネタは「苦労はさせねえ、幸せにするずら」で、「ずら」へのツッコミの後は「ズラ……ズラ……ジュラシックパーク2!今度一緒に行こうな太夫!」と叫んでいた。ジュラシックパーク、しかも2。どんな戦国時代だ。
極楽太夫との関係は上弦よりは釣り合いが取れていた印象であまり違和感はない。別れ際に太夫と抱き合う霧丸に嫉妬して二人を引き剥がすのも微笑ましく見れた。極楽太夫とのやり取りの流れも上弦・下弦では違っていて、上弦では年齢差を埋めるべくセリフ・演技でかなりフォローしていたのだな、と下弦を観ていて気がついた。
いん平はおっとう設定。兵庫にカンチョウされてから倒れるまでのダンスが幽霊っぽい斬新な動きで面白すぎるし、病気のサル呼ばわりには笑い転げてしまった。妙に納得できるたとえが神。『髑髏城の七人』を初めて観たときに誰もがツッコミを入れるのはきっと、お前が7人目だったのか!?ポジションのいん平だと思う。いん平は明らかに力もなさそうなのに、髑髏党だけでなく天魔王(の鎧を着せられた捨之介)にまで鎌や鍬で立ち向かっていく。本当に痩せていて貧弱そうなんだけど、だからこそ、ただのどん百姓と自ら称していた彼が勇気を奮い立たせて立ち上がるのが映えるというか。いん平すごくすごく好き。髑髏城に攻め込む兵庫たちの後に続いて、いん平が一人鎌を持って佇むところで泣けてきたぐらい好き。


松岡広大さん。霧丸。平間霧丸と同じく身体能力が高い!側転が一切片方へ傾いていなくて恐ろしく綺麗。平間霧丸を先に観ていたからか、松岡霧丸は結構柔らかな印象。何もかもに警戒心剥き出しというより、人懐っこそうな素の性格ながらも天魔王への復讐のために随所で気を奮い立たせている感じ。下弦の中で一番幼く見えるので(実際にも多分そうなのかな?)、捨之介や極楽太夫に何度も窘められる弟ポジションがすごく似合っていた。下弦では極楽太夫のキャラクターもあるのか、霧丸と太夫は比較的スキンシップ多め。頬っぺた押さえられているのが可愛かった。太夫・霧丸の姉弟感が愛おしくなる。上弦・下弦で共通していたのは、決め台詞の「髑髏城の全てはここにある」の言い方。今まで高らかに「ここにある!」と宣言していた沙霧とは趣を変えて、「ここにある」とむしろ自責の念さえ感じられるほどに重く呟く霧丸。沙霧より遥かに重く「復讐」という負の要素を追加された霧丸だからこそ、ああいう声のトーンでの決め台詞になったんだろうな。
初めは復讐に囚われていた少年が様々な人と出逢って考えを変えていき、恩人のために命を賭けて未来に足を踏み出すなんて少年マンガすぎる。下弦の松岡霧丸は弟属性に主人公属性もプラスさせたくなる雰囲気で、これってジャンプ原作の舞台だっけ?と一瞬勘違いしてしまうほど。本来の主人公である捨之介の影が薄いわけでは決してなくて、霧丸の存在感が増したんだと思う。捨之介と霧丸の絆がもう少し深まったように見えればバディものにもなり得そう。この捨之介と霧丸のその後が見たいって、ドクロで初めて思ったかも。沙霧は一人二役設定のときは捨之介と対の裏主人公で、ワカドクロ以降はヒロイン(もしくはヒーロー)的ポジションに移行していった気がしていたけれど、霧丸は霧丸でまた違う道を見せてくれた。
上弦と下弦では細々と台詞も違っていて、下弦で気に入ったのは、霧丸から太夫への「太夫、色々ありがとう」の一言。上弦ではたしか「太夫、ありがとう」のはず。「色々」の一言は演出での指示なのか松岡さんのアイディアなのか不明だけど、最初はお礼さえ言えなかった霧丸が万感こもったように「色々」と告げるものだから涙腺が刺激されてしまった。もはや保護者目線。こっちが万感こもる。


中村まことさん。贋鉄斎。やっぱり変態だった贋鉄斎。上弦では少しだけまとも路線になったようにも思えたんだけど、下弦では相も変わらず変態路線。具体的に何が違うのかまだ掴めていないけれど、贋鉄斎の小ネタは上弦よりも下弦の方がかなり笑えた。花を出した後の「YEAH」みたいな声からして面白くて困る中村贋鉄斎。べらぼうにかっこいいあの声で「これぞ幽玄」って言われると、変態なはずの贋鉄斎なのに、幽玄っていいよね……とたやすく影響されてしまう。単純。天魔王の所業を「相変わらず」と評していたし、殿が生きていた頃はもっと密接に関わっていただろう贋鉄斎・天魔王の昔が気になる。贋鉄斎の天魔王・蘭兵衛への態度を見ていると、やっぱり公式的にも蘭兵衛>天魔王のヒエラルキー?同じ小姓だったとはいえ、贋鉄斎の態度があからさまに違う。


羽野晶紀さん。極楽太夫。伝説がそのまま現れた!!!90年初演時の極楽太夫だった羽野晶紀さんが再び同役でカムバックされる日が来るなんて!羽野晶紀さんの極楽太夫を拝めるとは、新感線のキャスティングってやっぱり最高。羽野晶紀さんといえば小さな頃に再放送を繰り返していたミステリードラマの印象が強くて、生で観るのは今回が初めて。いやー、声が若いからか年齢不詳で、男たちとの年の差を露骨には感じさせない極楽太夫だった。きゃんきゃんした感じが可愛い!好き!キーの高い声だけど嫌にはならない絶妙なギリギリライン。浮かれている荒武者隊対して、高田聖子さんの太夫は仕方ないねぇと鷹揚に肩を竦めそうで、羽野太夫は歓声を上げてそれに混ざりさえしそうな感じ。自分自身も乗っかることで男たちを甘えさせてあげてるというか。とにかく好き。
高田太夫と比べて、姉ポジションの色合いが濃い羽野太夫。朝まで寝てるって言ったよねと霧丸を叱りつけるところなんてまさにお姉ちゃん。母ではなく姉らしい若々しさと距離の近さ。会って間もない霧丸との距離の詰め方が上手い。木村兵庫も須賀兵庫より貫禄のある雰囲気なのもあって、兵庫を相手にしても台詞ほど年の差は感じなかった。最後の金五百枚のくだりで、金を持って行けと促す兵庫に対して頑なに何度も拒むところに羽野太夫らしさを見た気分。
蘭兵衛との関係は姉弟のようでほんの少しの恋慕もありそうで、悶えてしまいそうなほどにかなり好み。滲み出るぐらいの色恋要素がたまらない。怖い目をしているよ、と気遣う声にもほんの少し甘さがある。羽野太夫はスキンシップが多めで、廣瀬蘭兵衛の胸元に手を添えたり腕を肩に持ち上げたり、ああもう仲良しだなぁ!と一つ一つの仕草から蘭兵衛を大切に思っているのが伝わってくる。下弦に関しては蘭の花の演出があってもよかったかも。お互い憎からず思っていそうな二人を散々に見せつけた後で、ドクロならば避けて通れない蘭兵衛の死ですよ!何だこの落差!辛い!蘭兵衛を倒してもなお引き金を引いていた極楽太夫が兵庫に止められた後、蘭兵衛の体に縋りつくのが切なすぎる。月髑髏の太夫は蘭兵衛を殴らない。手を上げることもせずにすぐさま蘭兵衛に縋りついた太夫は、この瞬間だけ「りんどう」になっていたのかもしれない。ああ、下弦髑髏は蘭兵衛と極楽太夫が私にとっての沼……。涙涙の二人がカーテンコールでは仲良くお手てを繋ぐって世界線に混乱する。供給に慣れていないヲタク。


千葉哲也さん。狸穴二郎衛門。千葉二郎衛門イケオジ~~~!私が初めて観たのはワカドクロでそのときの狸穴二郎衛門も千葉さんだったけれど、千葉二郎衛門はいつまでもイケオジで喜ばしい限り。むしろ、ワカドクロの頃よりさらに男っぷりが上がった印象。明らかにただの牢人じゃないでしょうと丸分かりの千葉二郎衛門が好き。今回もおきれ(名前が合っているか微妙)と仲良しで、二人でいちゃいちゃしてるのが微笑ましすぎる……。この瞬間で時を止めて……。上弦・下弦ではおきれに対する謝罪の流れが違っていて、事切れたおきれの元に向かおうとする狸穴二郎衛門を、極楽太夫が両手を広げて制止する。これ以上近づくなと。その制止に従った千葉二郎衛門、太夫たちがいなくなってもそこから足を踏み出さずにその場で土下座。しかも「成仏してくれ」と涙混じりに言うから、こんなのこっちが泣く。「成仏しろよ」より「成仏してくれ」の方が、後悔や懇願が感じられて好き。カーテンコールでも二階(?)から下にいるおきれと視線を交わしてお互いににこにこしていて、二人とも可愛すぎる~~~と吐血しそう。カーテンコールは本当に目が足りない。私に目を。
千葉二郎衛門が最高なのは、金五百枚のくだりで愉快そうに笑うところ!強かな民に呆れるでもなくしてやられたと悔しそうにするでもなく、本当に心から満足げに笑っている。ここの笑い方、イケオジの限界突破している。

 

気づけば一万字超過した暑苦しい感想を書くぐらい、関東荒野に上がった月は予想を遥かに超えて最高でした。1~2月にかけてしばらくは、月髑髏の感想記事と妄想記事を書き散らかす予定。二回目の上弦・下弦の感想をまずは書かないと!こんなにも楽しめる月髑髏の後期チケットがまだ購入できるなんてマジか……と震えつつチケットを当然のごとくローチケで買い足し。この前なんて劇場ロビーで座席まで選択できるチケット販売が行なわれていて、吸い込まれるように向かってしまった。13,000円=1ドクロという等式があらゆる場面で自動換算されている近頃。とにかく月髑髏は上弦・下弦ともに分かりやすくてアツい展開なので、少しでも気になっている方はぜひ!