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ときめきの用例採集

劇団☆新感線『髑髏城の七人 season月 上弦の月』(12/5)

劇団☆新感線『髑髏城の七人 season月 上弦の月』の12/5ソワレ公演の感想。上弦髑髏のネタバレしかないのでご注意を。これまで書いてきた月髑髏関連の記事はこちら。

seshiki.hatenablog.com

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まずは上弦髑髏を観てきた!下弦髑髏ももうすぐ観に行く予定。私の努力が足りないのか上弦髑髏はS席チケットがことごとく獲れなくて、数回以上訪れてるステージアラウンド東京で初のサイド席。12,500円払うのに見切れるってどういうことなの……これぞ格差社会……と結構覚悟して臨んだからか、予想よりは遥かに見やすかった!何と言ってもサイド席の名にふさわしく端の端の席だったので、目の前通路をキャスト陣が駆け抜けていくという役得!360度劇場の醍醐味~~~!多分、捨之介以外は間近を通った、はず。サイド席で見えなかったのは贋鉄斎庵でのラスト、蘭兵衛の後に続いて霧丸が階段を駆け上がるシーン、捨之介vs天魔王の一騎打ち序盤での霧丸たちの動きなど。過去ドクロを観ているから多少の補完はできるけれど、月髑髏が初見の場合はもちろん普通のS席がベター。
上演時間は公式アナウンスでは3時間55分とあるけれど、ソワレ公演ではカーテンコールを含めても21:50には終了。比較的早く退場しやすい座席だったので21:53には市場前駅にいた。それにしても18時開始で21:50終了って歌舞伎かーい。ただ、寒い帰り道でもニヤニヤしてしまうほどの圧倒的満足度だったので上演時間の長さには今のところ文句なし!冗長と少し感じた部分も今後ブラッシュアップされるだろうし、早くも二回目の観劇が楽しみ。そういえばライブビューイングも決定したそうでおめでたい。両日行こう。次はどの映画館で観ようかな。


下弦髑髏も観た後で感想を書き連ねようと考えていたけれど、予想以上に上弦髑髏に熱狂したので鉄は熱いうちに打ての精神で早速書いていく。
舞台全体の感想としては、月髑髏面白い~~~!の一言。超ワカドクロと銘打っていただけあって運動量多め!男子校さながらの男性ばかりのキャスト陣で繰り広げる少年マンガのような熱い展開!月髑髏で応援上演がもしもあったら、観客皆で「第六天!」「第五天!」って叫びたくなるぐらいの一体感!大本の設定はワカ・花髑髏をベースにした印象の一方で、無界の里設定はアオだし、歌と踊りがあるのは鳥に通じるところがあるし、生駒の最期(これが悶えるほど好き)は風からの踏襲だし、懐かしいやら嬉しいやら最高。美味しいとこ取りとはこのことか!ドクロ初見の方もドクロ中毒リピーターも同じく楽しめるって容易ではないだろうに、それをさらりとやってのけるんだから本当に凄まじい。過去ドクロを観たことがある側からすると、そう改変しましたか!と楽しめたり感心したりできる部分も多くて新感線はやっぱり至高。
月髑髏がこれまでのドクロと決定的に違う点として、まずは捨之介の心持ち。天魔王を殺そうとしない捨之介なんて初めてだから、うわ~~~そう来るのか~~~!と驚いた。鳥髑髏のときにも実感したけれど捨之介の信条を改変するだけでストーリーが大きく変わっていく。二つ目は沙霧から霧丸への変更。捨之介と沙霧の関係が一番色濃く出るのは一人二役設定で、影武者なのに生き残ってしまった捨之介と影武者を犠牲にして生き残った沙霧の対比が素晴らしすぎると盲目気味に惚れ込んでいる。正直、一人二役設定でないなら、沙霧の性別を変更しても特に支障なさそうだと思うぐらい。捨之介と沙霧の間に漂うほのかなラブ要素がたまらんという個人的な好みは涙を呑んで諦める。あ、鎧の中が捨之介だと見破るくだりは女子である沙霧の方が納得しやすいかな。でも今回、復讐に囚われる霧丸とその苦悩に寄り添って未来へ背中を押してあげる捨之介という関係もなかなかよかった!

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キャスト別感想。
福士蒼汰さん。捨之介。サイド席だったのもあってか風髑髏同様におみ足のギリギリまで見えて緊張。福士捨之介はスマートかつ爽やかで、軽く踊るただのボックスステップがここまでオシャレに見えることあります!?と感動した。無界の里の女性陣に囲まれても全くいやらしさがなくて、男子校のはずなのにここだけ共学の余裕……と自分でも意味不明な感想を抱く始末。殺陣も大して違和感がなくて、来年の『BLEACH』にも期待できるぞこれは。武器が特殊だったとはいえ『無限の住人』で殺陣を経験されてたし、『曇天に笑う』『BLEACH』などの撮影も済んでるから殺陣は特訓済みだったのかな。今までのやりたい放題の変化球がむしろ懐かしく思えるほどに、百人斬りも王道でかっこいい~~~!霧丸が手伝うのも今作のストーリー的に納得度高いし、三人で挑む百人斬りには圧倒された。ただ、月捨之介って人を極力殺めなさそうなので百人斬りのイメージとは少し合わなかったかも。キラキラしてる福士捨之介の姿との相乗効果もあって、地の男としても汚れ仕事などをしていなさそうなんだ。その分、蘭兵衛が人斬りとして頑張っていたのかな。あと一つ、うーんと思ったのは霧丸を救出するとはいえ女性への闇討ち。女性の服を剥いでいくなんて月捨之介は絶対にしなさそうだし、観客もこの演出で別に笑ってないし、もう少しスマートな見せ方にしてほしい。
捨之介の武器、番傘と斬鎧剣。どちらも最高だった!番傘を手にした福士捨之介の姿は観劇前に何度も目にしていたけれど、ここまで月髑髏を象徴したアイテムになるなんて予想外すぎる。捨之介の小道具がここまで活かされたことってない気がするから新鮮。番傘キーホルダーを新感線は発売すべき。そして、斬鎧剣。今作の斬鎧剣は何なの?少年マンガなの?と思うレベルの段階ありバージョン!斬鎧剣が段階変化するなんて予想できた人いないでしょ、最高かよ~~~!「第五天、化楽天!」「第四天、兜率天!」と捨之介が高らかに叫びながら天魔王の鎧を剥ぎ落として人の男に戻す(天を落とす)という演出には平伏すしかない。か、かっこいい~~~!
月髑髏の捨之介は、復讐に舵を切っていた鳥髑髏とは真逆で、天魔王に対して「殺す」じゃなく「止める」ために動いている。革新的な捨之介像。これまでも他人の死に涙する優しい捨之介はいたけれど、天魔王に対して「殺す」以外の選択肢を見せたのは初。捨之介のこの信条は一切崩れることなく、天魔王の鎧を剥ぎ落とした後でさえとどめを刺そうとはしない。ここの天魔王が哀れで哀れで。斬鎧剣によって鎧を全て剥ぎ取られてもはや成す術もないのに、それでも捨之介は天魔王に対して刀を向けない。まっすぐすぎてかえって(天魔王にとっては)残酷。そりゃ自らその刀に身体を突き刺すよね……。ああ、天魔王……。天を落とすけれど殺しはしない、地は受け止めるんだ、と口にする捨之介には若さが溢れていて、それ故に天魔王を「止める」という選択肢が初めて生まれたんだと思うとこみ上げてくるものがある。天魔王からすると一番耐え難いし理解できない選択だろうけどね!そして、その捨之介が最後の最後に刀を突きつける相手が家康というのがね……!家康の喉元に刀を向ける捨之介からは「足掻き」を感じられて、生に執着するのも若さだと納得。月捨之介の決めセリフ「天に誓った」かーーー。天に誓った、天に誓った……。天と地の関係性などの辺りはまた今後観るときに考えたい。「昔の縁も」のときの声がひどく切なくて最高だったので、蘭兵衛について(天魔王も?)「ガキの頃から知り合い」と言っていた月捨之介の哀しみにも思いを馳せてしまう。


早乙女太一さん。天魔王。はぁ〜〜〜最高〜〜〜!ハイローと新感線舞台ぐらいでしか早乙女太一さんの演技を観れていないけれど、どんどん積極的に演技にも「遊び」めいたものを取り入れられている気がして眼福。『蛮勇鬼』の頃とは違うんだな。これぞ進化。私はどうしても太一さんの殺陣に目を奪われがちだけど、月髑髏では演技もたっぷり堪能できた。天魔王よかった~~~!衣装は何となくドラキュラっぽくて、金・黒・赤という天魔王にしては珍しいカラー。結構女性的でおじゃるっぽく、女性に甘えたな面があるように見えた天魔王。意外かつ独創的!演じる人の数だけ天魔王があるんだと改めて実感。太一さんがパンフレットで、一番多く観ているのが森山未來さんの天魔王だから無意識に影響されるかも、と語っていて、ワカドクロが初めて観たドクロで鳥髑髏が最高に好きな人間にとってはご褒美発言すぎてどうしよう。豊洲に向かってお辞儀すればいいかな。しかも本当にその通りで、鳥髑髏みをそこはかとなく感じる。早乙女天魔王はもちろんオリジナルなんだけど、鳥の森山天魔王のような「遊び」を感じられるというか。あ~~~本当にありがとうございます!!!
冒頭から天魔王劇場in安土城。「第一天は四王天」と語り始めた瞬間からぞくぞくした。人の男が天魔王になる瞬間が描かれただけでも驚いたのに、鎧ダンサーズ(パンフレットで早乙女太一さん命名)とのダンスも初っ端からあるなんて!このときの歌詞全部知りたい!鳥髑髏のときも散々言ったけどあのスクリーンに歌詞を投影をしてくれる気はないのかな、ないんだろうな。冒頭で触れた第一天云々のくだりがラストにああも活きてくるなんて誰が予想できたでしょうか……。いのうえさんと中島さんの頭の中を覗きたい。最高。人の男から天魔王になったとき、「俺が」と言いかけて「私が」と言い直していたので、殿の一人称は意外にも「私」だったのかなと妄想。早乙女天魔王ってば恐ろしく女性的で、セリフの強弱と緩急がものすごくツボで困る!嬉しすぎる!「構わぬよ、お前が蘭兵衛でも蘭丸でも」と告げる声の色っぽさたるや!無界の里襲撃時に家康から銃を向けられた後、鎧を大事そうに触ったり壁に隠れたりしていて、動きも逐一意外性を秘めている。驚くほどに小物っぽい。
生駒や御伽衆とのじゃれ合いもほのぼのしていて、仲良しだな~~~とあんなの滾るしかない。指示棒で地図を指す際に御伽衆の背にごくごく自然に腰掛けるのはとんだSMプレイだし、蘭兵衛が助けてくれたと無邪気っぽく喜んで御伽衆二人に頭を撫でられるのは可愛いし、天魔王は皆の姫なの???サークラですか。特に、地図を書き換えなくてはと呟いた後で生駒に抱き着いてよしよしされるのが微笑ましすぎて、天魔王と生駒のラブラブ度ってば花鳥風月で右肩上がりでは!?その挙句、天魔王と生駒の二人で社交ダンスめいた動きをしつつ蘭兵衛に斬りかかったかと思えば、生駒を背後から抱き締めた上で刺すっていうね……。さすがは天魔王。その後、天魔王の真意を理解した生駒は自ら喉を掻っ切っての自害。風髑髏のときも散々褒め称えたけれどこの演出最高!!!天魔王と生駒の関係性についてもまた考えたい。
捨天蘭の関係。天魔王は捨之介より蘭兵衛への矢印が強いように思えて、その辺りは鳥髑髏に通じるものがあると感じた。殿はお前のことだけを言った、と蘭兵衛に真相を明かすときの声が涙混じりでキツイ。しんどい。だがそれがいい。鳥髑髏で殿を喪って外道に落ちざるを得なかった蘭兵衛を演じきった早乙女太一さんが、今度は天魔王として殿への報われない思慕を明かす月髑髏。鳥蘭兵衛の転生が月天魔王の姿なのか。どの世界線に行けば私たちは幸せになれるんだ!(混乱)早乙女天魔王は冒頭の安土城にて、蹂躙されるぐらいなら落ちた方がいいと自らの理想を語っていて、これは殿にも通じるものがあるのではとついついヲタクは妄想してしまう。森蘭丸の存在によって変わっていくぐらいなら、人の男が思い描いてた織田信長公への理想が蹂躙されるぐらいなら、その前に天を落とそうと考えるのは至極当然のように思えた。蘭兵衛への根深い嫉妬も理解できる。ただ、基本的に本当のことを言っていないとパンフレットで太一さんが天魔王について語っているぐらいだし、天魔王の発言ってどこまで鵜呑みにしていいのか謎な部分が大きい。人の男が天魔王になる瞬間を目撃したからなおさら強く思うのかもしれないけど、早乙女天魔王は捨之介・蘭兵衛の二人を必要としていなさそう。人が天になるには横棒二本足りない、人に横棒二本を足しても天にはならず夫になるのが関の山、などと捨之介が揶揄するドクロは過去多かったけれど、今回そのセリフはない。それは月天魔王が横棒二本なんて全く求めていないからなのでは。あ~~~天魔王についても考えたいことが山ほどある!


三浦翔平さん。無界屋蘭兵衛。お顔がすんごく美しくて震えた。何あの美。イケメンさんだな~~~と思っていたけれど、三浦蘭兵衛は美。美の一言。パンフレットで予想以上に踏み込んだところまで語っていて、かなり興味深く読んだ。キラキラものの卒業、とか役者さん側も考えるんだな。三浦蘭兵衛は若者っぽい衣装の色もあってか結構オラついた雰囲気。たおやかさよりも強かさが色濃い印象で男らしさがあった。兵庫への平手がスマートだし、じん平が寄ってきたときに即座に無界の里の女たちを庇っていたし、一癖もふた癖もありそうなオラオラ蘭兵衛。それでも段差に腰掛けているだけの体勢でも妙な色気があって(ここは絶対に太一さんのアドバイスがあったと思うんだ!)、小姓・森蘭丸だったと言われても納得できるからすごい。荒武者隊とか、蘭兵衛さんって時々すげー色っぽいよなぁ!って絶対会話してるでしょ。狸穴二郎衛門と遭遇した瞬間に捨之介の裾を掴んでいたのが結構無防備で、子供の頃からの付き合いという気安さが垣間見えた。ただ、三浦蘭兵衛からは殿最愛の小姓だったという自覚は一切感じられないので、殿の愛情表現に問題があるのでは……と鳥髑髏でも感じた疑問再び。全ての元凶は殿なんだ。
月髑髏では人斬りとしての蘭兵衛の過去に思い切り焦点を当てていて新鮮な切り口。それもあってか、三浦蘭兵衛は少し捉えどころがなくて、表面そのままに受け取っていいのかまだよく分からない。一幕での蘭兵衛は基本的に強めの口調が多くて迷いや後悔が見えないので、二幕からの振り切れて以降の蘭兵衛の方が分かりみが深くて好みではある。一幕で確固とした強さを見せつけてきたからこそ、殿は先に逝ってしまわれたと呟くか細い声に心臓が痛くなる。たまらん。打って変わって、お前には分からぬよ、の冷酷さ!二幕蘭兵衛は人斬りとして覚醒していて、「楽しいなぁ、天魔王!」やら「何故この楽しみを忘れていたんだ」やらやりたい放題で、ある意味悔いなき選択をしたのだろうと思えた。殺陣も想像以上にスピードがあって、軽いジャンプもあって、三浦蘭兵衛すごい!殺陣はやいはやい、と最初観たときびっくりした。
極楽太夫との関係は姉弟のようでほぼほぼ家族に近いものに見えたし、その改変でよかった気がする。色恋より人斬りの方に振り切った三浦蘭兵衛が好きだ。蘭の花も登場させない潔さがよい。パンフレットではまさかの設定(聖子さんオリジナルの考えだけども)が明かされていて、聖子さんと三浦さんってそこまで年齢差あるんだっけ?とついついwikiで調べてしまった。年齢差って難しい。カーテンコールはこれまでのドクロと違って蘭兵衛と天魔王二人が揃い踏みでこれだけはいただけない……!白い彼岸花をバックに佇むのが蘭兵衛のセオリーじゃないの???ステージアラウンド東京の座席や導線に毎回文句つけてるけれど、それでもあのカーテンコールを見るだけで全て昇華されてきたのに何で急に変更なんて!カーテンコールで白い彼岸花をバックに佇む山本蘭兵衛を観て、ステージアラウンド東京はこのために建設されたんだ……と呟いたぐらいに神がかった演出で大好きなのに!まあ、蘭兵衛と天魔王二人の張り詰めた空気も息を呑む迫力で良さがあるので、次回観劇時にはこのカーテンコールにも慣れたい。


須賀健太さん。兵庫。ジーンズと革ジャンをアレンジした感じのパンクな兵庫。私の中でベスト兵庫に迫る勢いで好き……!加速度的に好き!須賀くんの言動全てが軽やかで若さに溢れていて、兵庫には若さ故の無鉄砲感を期待しているのでピッタリだった。月髑髏では霧丸が復讐に囚われているからこそ、兵庫の底抜けの明るさと器の大きさがなおさら尊い。序盤であれだけ軽んじてきた霧丸に対しても「道理なんか~」と言ってのけてあげるのがさすがは兵庫で、ここは少年マンガ的お約束ではあるものの胸が熱くなった。荒武者隊とも仲良しで、15の夜を歌いながら皆で捌けて行く場面があって、多分この辺りの曲は日替わり?荒武者隊の行進場面(兵庫は不在)は2.5らしさを感じられて月髑髏の歌と踊りの中でも特にお気に入り。定番のくんろネタは「苦労はさせない、太夫」と続いたけれど、周囲が誰も上手く拾ってあげられないならこういうネタはしなくてもいいんじゃないかなと。誰かツッコミ入れてあげて。
じん平はおっとう設定。おっとうだからか、鎌のときもじん平が兵庫を庇うこと多めだし、最後に兵庫の背を押して極楽太夫との仲を取り持ってあげるし、じん平&兵庫父子微笑ましすぎる。今回は過去ドクロ履修済みのリピーターをあっと驚かせる展開で、爪月もまさかの鎌使いというね!ここ大笑いした。いつもの稲刈り剣では勝てず、鍬を使っての必殺芋掘り剣!初めて見た人も面白いだろうし、ここを改変してくるか!とリピーターも盛り上がれるし、必殺芋掘り剣よかった。耕すことを忘れてるのでは、のセリフも最高。
極楽太夫との関係は女性としての好意アリという設定のままで、そこは崩さないのかと少し驚いた。私たちは年が違いすぎると極楽太夫も何度か言う通り、太夫と蘭兵衛の間の恋愛要素も潔く除いたんだし、兵庫との関係性も母性的な方向で構わないんじゃないかと感じてしまった。いや、太夫の周りをちょろちょろする兵庫のわんこっぷりは可愛いんだけど!月髑髏では太夫が一身に「母性」を引き受けてるから、兵庫ぐらいは色恋が混ざっていてもいいのかな、どうだろう。とはいえ、兵庫が最後に「俺はあんたに生きててほしい」と伝える場面、「俺は」で声が引っ繰り返っていてそこがたまらなくよかった。泣きそうになる。須賀くんはカーテンコールでの振る舞いまで本当に楽しませてくれて、極楽太夫が歩くときに着物の裾をせっせと持ってあげていた。か、かわいい。荒武者隊とアイコンタクトしてるし、前方に落ちてた鎧をつけてみせるし、これは愛される。間違いない。


平間壮一さん。霧丸。身体能力が高くてめっっっちゃ動ける霧丸!花鳥風の沙霧も運動神経抜群で申し分なかったけれど、霧丸のキャラクターが男性というのもあってアクションの幅が広がっている。ここまで動けるのか、平間さんすごい。ただ、カーテンコール直前に転んじゃっていたので心配。百人斬りにも参加しているし、霧丸の運動量はとてつもなさそう。演出変更で言えば、口説きのタイミングで霧丸が乱入してきたのは驚いた。霧丸の前で口説きか~~~!たしかに大人しく隠れてはないだろうな、霧丸の場合。沙霧との違いで気になったのは、決め台詞の「髑髏城の全てはここにある」かな。沙霧が高らかに「ここにある!」と宣言することで絶大なカタルシスをこれまで感じてきたから、「ここにある」と噛み締めるように口にする霧丸に対して、男の子だとこうなるのか!と衝撃を受けた。性別変更って面白いものだな。
霧丸は冒頭から兵庫を利用して結構賢いところも見せつつ、手負いの獣めいたピリピリ感が半端ない。復讐に囚われてなかなか心を許さない霧丸の心をまず溶かしたのが極楽太夫のように思えて、太夫の母性に拍手したくなった。そうして、熊木衆と雑賀衆は同じく山に生きる者だという共通点。なるほど、そういう視点で同じくくりにするのか。別れ際に「太夫、ありがとう」と伝える霧丸に涙目。捨之介との関係は兄弟のようで、鎧の中の捨之介に気づくくだりを除けば他は特に違和感はなかった。鎧のくだりは「女には分かるもの」っていう女性特有の勘(捨之介と沙霧のほのかなラブ要素)でいつも片付けられているから霧丸の場合どう処理するんだろうと思っていたら、大して触れられることなく流されていた。ここは捨之介と霧丸の間にもう少し分かりやすく絆が見えていれば納得度も上がるかも。男の友情的な感じで!


粟根まことさん。渡京。月髑髏の渡京にはそろばんくんがいない!!!その代わりに、背景の水車に変装していたり(文字にするとますます意味不明)、一輪車に乗ったり、そろばんくんがいなくても渡京は大忙しだった。霧丸や髑髏党はスケボーなのに渡京一人だけ何故に一輪車!サイド席のおかげですぐそばを一輪車で颯爽と駆け抜けていく渡京を拝めた。なかなかスピードが速い!髑髏党と遭遇したときの対処もこれまでと違っていて、まさかのツイスターゲームで爆笑。しかも尺長めで楽しい。沙霧&渡京コンビの意外にも仲良しな雰囲気が好きだから、霧丸とも結構好き放題言い合っていて嬉しくなった。


市川しんぺーさん。贋鉄斎。月髑髏の贋鉄斎もこれまた自由!風髑髏ほどスペックてんこ盛りではないけれど、まさかお花を極めているなんて。突然の剣花道。木偶坊贋鉄には笑い転げてしまった。花をぽんぽん自由自在に咲かせる様はまるで花咲かじいさんのようで、これまで変態に振り切っていた贋鉄斎が少しだけまとも路線になったようにも思えた。いや、十分変態か。これまでの贋鉄斎のおかげでもう判断基準がブレブレ。髑髏党によって庵を爆破されたのは予想外で、贋鉄斎完全にとばっちり!巻き込まれっぷりが半端ない。王道の百人斬りは文句なしのかっこよさ!


高田聖子さん。極楽太夫。アオドクロぶりの極楽太夫!私が初めて観たのはワカドクロで、聖子さんはそこでは贋鉄斎だったから、贋鉄斎が極楽太夫に……と感慨もひとしお。聖子さん特有のものなのか月髑髏共通なのかまだ下弦を観ていないので不明だけど、月の極楽太夫は基本的にシリアスにならず、大人の女としての度量が広い、広すぎる。粋な姉御!歌うときも終始しっとりしてるわけじゃなく若干からっとした明るさがあった。蘭兵衛にも霧丸にも兵庫にも母や姉のように母性を全面に出して包んであげていて、これは年齢差を逆手に取った改変。ただ、兵庫とはともすれば母・息子みたいな色合いが濃くなってしまってこの辺りは難しいなぁと。蘭兵衛との関係性が薄れた気がするのも否めないけれど、その辺りは人斬りとしての蘭兵衛に今回焦点が当たっているからあまり気にならない。無界の里設定がアオや風と同じで、男たちの金を明日への希望へと変えてあげるという主張が聖子さんの極楽太夫にはよく似合う!月の極楽太夫は無界の里襲撃後も狸穴二郎衛門に平手打ちしないし、倒れた蘭兵衛のことも叩かない。全てぐっと呑み込む筋金入りの強さがそういった部分に垣間見えて、男たちは太夫の度量に甘えやがって!とまで思えてくる。本当に惚れ惚れするぐらいかっこいいのだ、聖子さんの太夫は。


渡辺いっけいさん。狸穴二郎衛門。いっけいさんのとぼけたようで本気でもある狸穴二郎衛門好きだ。捨之介たちと並んで兵庫のことを笑うおふざけも似合っているし、無界の里襲撃後のおでんへの「成仏しろよ」にも計算高さは見えないし、ほどよく人情味のある家康。おでんとのシーンは短めだけど仲良くいちゃいちゃしていてほんわかする。狸穴二郎衛門でお気に入りの「馬引けぇーい」のセリフもあったので満足。

 

想像を軽々と超えて大満足だった月髑髏、上弦。もうすぐ下弦も観に行けるので早く二つの違いも感じたい!関東荒野に上がった月を見逃せない!