僕は君が

ときめきの用例採集

『危険な関係』

危険な関係』10/17ソワレ公演のネタバレあり感想。

 

普段は、好きな劇団・惹かれるストーリー・気になる役者さんなどでチケットを気ままに確保しているけれど、今回の『危険な関係』の目的はこれ。美しい鈴木京香さんを生で観たい!!!いつもならほぼしないフォントサイズ変更までして強調したいこの主張。9~10月が立て込むのは前々から分かっていたので、かなり前から『危険な関係』のチケットは入手していた。友人が自分へのご褒美としてエステやライブに行くように、美しい女性を見に行くのが自分にとってのご褒美な部分がある。イケメンよりも美女に沸いてしまう性癖。
場所はシアターコクーン。渋谷をうろつく度に思うけれど、渋谷駅と東急百貨店を地下で結んでください、東急の偉い人!劇場については、相変わらず客席間が狭いなーロビーを突っ切るお手洗い行列の導線整理が行なわれないなーなんて思いつつ、『太陽2068』にとっては最高の劇場だったのでその思い出だけで良いイメージを保っている。コクーンで上演する舞台のパンフレットって、タイトル部分に大きく「COCOON」の文字が入るのが主張強い~~~と毎回思ってしまう。舞台によっては違うこともあるのかな?

 

原作は18世紀末のパリ、華麗なる社交界が舞台。
社交界に君臨する妖艶な未亡人メルトゥイユ侯爵夫人(鈴木京香)は、かつての愛人ジェルクール伯爵への恨みから、その婚約者セシル・ヴォランジュ(青山美郷)の純潔を踏みにじろうと稀代のプレイボーイであるヴァルモン子爵(玉木宏)に助力を求める。しかしヴァルモンは、叔母ロズモンド夫人(新橋耐子)のもとに滞在している貞淑なトゥルヴェル法院長夫人(野々すみ花)を誘惑しようとしているところで、その依頼を断る。ところがセシルの母ヴォランジュ夫人(高橋惠子)こそが、トゥルヴェル夫人に彼を非難し近づいてはならぬと忠告していることを知り、ヴォランジュ夫人への復讐を決意、メルトゥイユ夫人の計画にのる。
一方、清純なセシルは純粋な若き騎士ダンスニー(千葉雄大)と恋に落ちていた。そこにメルトゥイユ夫人の策略が、そしてヴァルモンはトゥルヴェル夫人を誘惑に……。
二人が仕掛ける退廃に満ちた恋愛ゲームが繰り広げられていく。

 

www.bunkamura.co.jp

18世紀末のパリの華麗なる社交界が舞台の今作。社交界が舞台だから、愛人を持つことは当然として話は進み、一対一の関係なんて不毛で健全じゃないと咎められたりもする。このやり取りで何か思い出すなーとずっと考えていたんだけど、あれだ、よしながふみの名作BL『ジェラールとジャック』のワンシーンだ!『危険な関係』とは全く関係ないけれど、フランス革命時の平民×元貴族の名作BLなので興味がある方はぜひ。
今回、パリの社交界が舞台であるけれど何故か舞台装置と衣装などは和を取り入れたもの。背景に日本庭園が見えたり生け花をしていたり、扉も全てガラスの引き戸で横に引く仕様。衣装はどれもこれも美しくて、これはお金がかかっているぞ……とひしひしと感じるレベル。女性陣の衣装は和服をオマージュしたような袷や帯っぽいベルト(?)付きのドレス。男性陣の衣装も生地の繊細な光沢に目を奪われるほどで、特にヴァルモン子爵のお召し物は全て最高。Bunkamuraギャラリーででも衣装展してほしい。

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美しい鈴木京香さんを見ることができれば満足~ぐらいの気持ちで観に行ったけれど、舞台も面白かった!そもそも、玉木宏さん×鈴木京香さんという組み合わせが美のビッグバンで素晴らしい。生きている間に玉木宏さんを生で見る機会にありつけるとは思っていなかった。あ、冒頭から丁々発止の掛け合いが続くので、あらすじと登場人物名は頭に叩き込んでおいた方がよさそう。
彫刻のような玉木宏さんが立て板に水で既婚女性を口説いたり、年端も行かない15,6の女の子にセックスのテクニックを教えたりするのを、ヴァルモン子爵ヤりたい放題だな~とその手練手管に感心していたはずがいつの間にやら、あ、そういう路線に!?と衝撃を受ける展開へ。大人の駆け引きから男女間の戦争に縺れ込んだ瞬間のゾクゾク感が最高だった。そして、あの幕切れ!最後の最後、あれで心臓を掴まれた。何だあれ!?これは原作を読まなければ!退廃的な社交界のお遊びとしての恋の駆け引きだったはずが、異なる性別である男女間の戦争になっていくって、原作でどう表現されているのか興味ありすぎる~~~。第2部中盤まで観てきたものは対等な恋の駆け引きなんかではなく、メルトゥイユ侯爵夫人(鈴木京香さん)が自分以外の人間を駒として利用した孤独なオモチャ遊びなのかもしれないと思い当たった瞬間、ぞわりとした。そして、ヴァルモン子爵という犠牲を出しても、「私たちはゲームを続けなくては」と呟くメルトゥイユ侯爵夫人。その両目に巻かれた白い包帯の意図はまだよく掴めていない。包帯を巻かれた上でくるくる回された後に覚束ない足取りで歩くメルトゥイユ侯爵夫人もまた、社交界の一歯車のマリオネットのようだった。


キャスト別感想。
玉木宏さん。ヴァルモン子爵。
美の彫刻。神様が丹精込めて作り上げた造形美。予想以上に上半身は裸のことが多く、各種情報サイトがその肉体美のことばかり取り上げている意味を理解した。恐ろしく鍛え上げられている上半身で、腹筋でなく脇腹まで綺麗に筋が入っていて、その上から無造作にガウンを羽織ったりするものだからもはや美の暴力。あの端正なお顔に無敵の上半身、そうして長いおみ足!あ、モテる。そりゃモテる。一目見た瞬間ですでにヴァルモン子爵としての説得力が凄まじい。降参するしかない。このヴァルモン子爵相手に数ヶ月以上抵抗を続けたトゥルヴェル夫人はたしかに貞淑だと頷ける。鍛え上げているからか、抱っこがお得意。千葉雄大さんが飛びついてもびくともしないって、玉木宏さんの体幹恐るべし。
そんなヴァルモン子爵はエロい。色気なんて生易しいものじゃなくエロい。美辞麗句を並べ立てているけれど下ネタを言っていることが多い。笑ってしまう。思い人に宛てた手紙を書く際に馴染みの娼婦を背後から抱きながらその背を机にして文字を認めるわ、寝室に忍び込んで「キスしてくれたら出て行く」という交換条件を持ち出しておいて少女がキスした瞬間に挿れちゃうわ、ヤりたい放題子爵。ジッパーを上げ下げする動作、ここまで見ることってあるんだな……と途中でしみじみ思った。ただ、本質的には、そういう直接的な色気よりも言葉と目で相手をコントロールしていた印象。外見だけじゃなく自分自身の全てを効率的に活かして恋の駆け引きを楽しんでいるんだろうと窺えるプレイボーイ。あの玉木宏さんが稀代のプレイボーイを演じるというただそれだけで、ものすごく価値があることでは???
そんな向かうところ敵なしの子爵と対等以上に張り合い、そして操れるのは、鈴木京香さま演じるメルトゥイユ侯爵夫人だけ。メルトゥイユ夫人の前では自分を認めてもらいたがっている子供のようでさえあった子爵。それでいて、メルトゥイユ夫人が「女はしたたかにならざるを得ない」と珍しく本音を話したところで、その感情は一切子爵の胸には響いていない感がありありで、男ってやつは……と思わされる。この感情どこかで似たようなものを味わったぞ……、あ、『源氏物語』ですね。納得。古今東西、プレイボーイってやつは~~~。自覚はないながらもトゥルヴェル夫人に本気の恋をしていたはずなのに、社交界の笑い者になるのを恐れて、メルトゥイユ侯爵夫人の策略通りにトゥルヴェル夫人を捨ててしまう子爵。このときの玉木宏さんが繰り返し告げる「僕にはどうしようもない」の残酷さに息を呑む。カーテンコールのとき、舞台上に血のついたシャツ姿で倒れたままの玉木さんが不意に起き上がって挨拶するのがシュール。暗転のときにはけておいた方がスマートな気が。


鈴木京香さん。メルトゥイユ侯爵夫人。
美。ため息が出るほどに妖艶。美しい人というのは額までも綺麗なんだと学んだ。膨大なセリフ量なのにずっと声が聞き取りやすい。数回ある衣装チェンジでもどれも最高だし、いやー観に行ってよかった。デコルテをがっつり露出させたドレスが多くて肌がこれまた綺麗。社交界の裏で君臨しているのも納得の毒婦感を醸し出していて、若いツバメを従えるのがここまで似合う女優さんいるかな!??端正なお顔の玉木宏さんや千葉雄大さんを横に侍らせても全く見劣りしない圧倒的存在感に平伏すしかない。「女が女を傷つけるときは的確に心臓を狙う」という趣旨のセリフがあって、その説得力たるや!
鈴木京香さんのエピソードで大好きなものがある。鈴木京香さんが本当に綺麗なので、三谷幸喜さんが「お綺麗ですね」と思わず声を掛けたところ、笑顔で「ありがとうございます」と返されたという話。三谷幸喜さんの新聞コラムだったかな、それで読んだのを今でも覚えている。本当に美しい方は、褒められたときもただ「ありがとうございます」と言えばいいのだ。今回のメルトゥイユ侯爵夫人の場合、お綺麗ですねなんて言っても、「あらどうも」の一言で終わりそうだけれど、それもまたよい。
ヴァルモン子爵目線で見ると、子爵を完全に翻弄したメルトゥイユ侯爵夫人は悪役かもしれないけれど、何故そういう女性になったのかを考えると見方が変わる。女性は男性によって支配されてきた時代という前提以外にも、メルトゥイユ侯爵夫人は「女はしたたかにならざるを得ない」と言うし、ロズモンド夫人は「男は多くに愛を振りまけるけれど女は違う」と達観してさえいる。男女でそれぞれ異なる愛への認識を持っていることをこの舞台では繰り返し、女性側から口にしている。メルトゥイユ侯爵夫人の過去についてはあまり触れられないけれど、男性に振り回されて生きてきた女性が自分一人で自由に生きていくという矜持を胸にして、そのときに選択した手段が他人を駒として利用するゲームっていうのが重い。やるせない。しかもその結果、メルトゥイユ侯爵夫人にとって特別な存在だったヴァルモン子爵は亡くなってしまう。それでもメルトゥイユ侯爵夫人は、もはやゲームを止められない。「私たちはゲームを続けなくては」の鬼気迫った響きがまだ頭に残っている。あの一言で幕切れって凄まじい演出。舞台上の明かりが消えて数秒ほど闇が続く間、うわーーーこれで終わりかーーーと静かに熱狂した。


野々すみ花さん。トゥルヴェル夫人。
清楚!ダサいドレスを着ている、なんてメルトゥイユ侯爵夫人は批判していたけれど、くるぶし丈のフィッシュテールワンピースが恐ろしく似合っている。生地も柄もシンプルで可愛い。メルトゥイユ侯爵夫人の言葉から、ハイネックで長袖のドレスでも着ているのかと予想していたので、いや全然ノースリーブだしお肌見せてるじゃないですか!とツッコミを入れたくなった。髪形やメイクも好感度の高い慎ましやかなもので、清楚系目指す女性はトゥルヴェル夫人を参考にすべき。
稀代のプレイボーイであるヴァルモン子爵の求愛を数ヶ月拒絶し続けた精神力に拍手!ヴァルモン子爵の色気に中てられている観客側としては、不貞を咎める夫が登場するわけでもないのにトゥルヴェル夫人頑張ってる~~~!と感心さえしてしまった。正直、ヴァルモン子爵は早々に夫人をいただいてしまうと思っていた。徐々に惹かれ始めてもひたすらにそれを誤魔化して距離を置こうとするトゥルヴェル夫人は、健気可愛い。チャラ男×生真面目の組み合わせってよい。そこまで凛としていた女性が、ヴァルモン子爵への愛を認めた瞬間に一気にのぼせていくのは見もので、そのまま床で抱き合ってしまう始末。今まで子爵が女性を相手にするときはベッドや辛うじて椅子程度はあったのに、初の床!ヴァルモン子爵が序盤に、敬虔で貞淑な女性が罪の意識に苛まれながらも自分への愛を認めるのがいいんだ!となかなかにゲスい性癖を愉しげに語っていたけれど、その気持ち分かりますわ……とこの二人のシーンで遅ればせながら頷いてしまった。背徳と快楽の背中合わせ!子爵への愛を認めて幸福なはずだったトゥルヴェル夫人が、急に別れを告げられた直後の半狂乱は痛々しいし、恐ろしさもある。あのときの叫び声、ぞわっとした。


千葉雄大さん。騎士、ダンスニー。
初登場時は独特で、退廃的な駆け引きが繰り広げられる舞台上での異分子だった。子爵や夫人とは全くタイプが異なるので、千葉さんのシーンでは笑いが起こることが多かった。コミカルな演技がキュートで、さすがは千葉雄大さん~~~。ヴァルモン子爵に懐いているのもこの上なく可愛い。子爵に渡したプレゼント、あれ何だったんだろう。光り輝くオスカー像に見えたけれど見間違いな気がする。テーブルに立てていたから何かの像なのは間違いないはず。というか、ヴァルモン子爵に駆け寄って足も絡めて抱き着けるって体重軽いんだなー!役柄的にあまり出番はないのかもと思っていたら全くそんなことはなく、第2部での変貌にはニヤニヤしてしまった。恋に恋するただの堅物では終わらず、第2部ではメルトゥイユ侯爵夫人の新しい愛人として雄の顔を見せるというギャップ!壁ドンならぬ柱ドン、いいねいいね!ポエミーな言葉を捧げてメルトゥイユ侯爵夫人にダメ出しされている姿なんて、完全に夫人に翻弄されている若いツバメ。
第2部後半での激昂は予想外。メルトゥイユ侯爵夫人の愛人として結構堂々と振舞っていたから、セシルへの恋心はもう捨て去ったのかと思っていた。ダンスニーの感情の移り変わりはほぼフォーカスされないので想像でしかないけれど、堅物ではあるものの、本命以外の愛人を持つことは別に普通っていう感覚だったのかな。あの時代の堅物とは一体。セシルのために子爵に決闘を願い出るダンスニー。このとき白い手袋投げつけてほしかった。決闘といえば白い手袋というのは二次元脳?セシルへのピュアな恋心の裏返しなのか、子爵への激しい憎しみからピストルを奪われてもなお抵抗して、ダンスニーは最終的にナイフで子爵を刺してしまう。このピストルのシーンで咄嗟に「危ない!」と言ってしまった方がいて、思わず笑いそうになってしまった。ものすごく気持ちは分かる。ピストル関連でのやり取りのときは結構客席から声が漏れていて少し面白かった。トゥルヴェル夫人のくだりでは私も危うく声が出そうに。


佐藤永典さん。従僕、アゾラン。
佐藤さんの演じる従僕、すごくよかった~~~!主人に仕えながらも小遣い稼ぎはそつなくする感じで、ああいう従僕キャラいいなぁ。ご主人様であるヴァルモン子爵とも結構仲良しで、この二人の掛け合いは観ていて楽しい。あの女はどうだ?って訊かれたときの何とも言えない表情がいい。無駄口は叩くし、遠慮なく小遣いを欲しがるけれど、着替えを手伝うなどで従僕として働くときはとにかく所作が綺麗。ダンスニーのナイフから子爵を守ろうとしていたし、ダンスニーに「いい気なもんだ!」(だったかな……)って食って掛かるし、何だかんだでご主人様思いなところが最後には垣間見えた。


一度の観劇では理解しきれていない部分も多いけれど、その辺りは原作を読んで確認してみる予定。東京では2,500~3,500円の立見席がまだ購入可能なようなので、美しくて退廃的なものを観たい方はぜひ。