僕は君が

ときめきの用例採集

映画『ベイビー・ドライバー』

もうそろそろ公開が終わりそうだけど、映画『ベイビー・ドライバー』の感想。結末などのネタバレはなし。

ベイビー(アンセル・エルゴート)。その天才的なドライビング・センスが買われ、組織の運転手として彼に課せられた仕事―それは、銀行、現金輸送車を襲ったメンバーを確実に「逃がす」こと。子供の頃の交通事故が原因で耳鳴りに悩まされ続けているベイビー。しかし、音楽を聴くことで、耳鳴りがかき消され、そのドライビング・テクニックがさらに覚醒する。そして誰も止めることができない、追いつくことすらできない、イカれたドライバーへと変貌する―。
組織のボスで作戦担当のドク(ケヴィン・スペイシー)、すぐにブチ切れ銃をブッ放すバッツ(ジェイミー・フォックス)、凶暴すぎる夫婦、バディ(ジョン・ハム)とダーリン(エイザ・ゴンザレス)。彼らとの仕事にスリルを覚え、才能を活かしてきたベイビー。しかし、このクレイジーな環境から抜け出す決意をする―それは、恋人デボラ(リリー・ジェームズ)の存在を組織に嗅ぎつけられたからだ。自ら決めた“最後の仕事”=“合衆国郵便局の襲撃”がベイビーと恋人と組織を道連れに暴走を始める―。

 

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贔屓にしている映画館で観たところ、観客が私以外全員男性で驚いた。たまたまだろうけどカップルさえいなくて偏りすぎていた客層。入場時にはなぜかハイロー週替わり特典の冊子を差し出されかけたので、ハイローの民っぽいオーラが滲み出てきたのかもしれない。

ベイビー・ドライバー』はパンフレットに記載されている「カーチェイス版『ラ・ラ・ランド』」というキャッチコピーが結構有名なのかな。私は『ラ・ラ・ランド』を観ていないのでカーチェイス版と呼べるのかは正直分からなかった。
そもそも、カーチェイスでのド派手なアクションを第一目的として観に行くと少し肩透かしかも。横転する車やバイクと車の追いかけっこを是が非でも見たいんだ!って場合は、ハイロー最新作を観に行く方が絶対いい。ただ、ハイローでは殺すのが目的のカーチェイス、ベイビードライバーでは逃亡するための手段としてのカーチェイスという明確な違いがあるので運転技術の見せ場も異なってくる。この辺りは比較して観ると楽しい!
私は最初、主人公が運び屋家業という設定からド派手なカーチェイス映画を予想して臨んだので、冒頭10分弱でものすごくテンションが上がった後、しばらく小休止した感がある。冒頭の逃亡劇でのドライビングテクニックが凄まじいからこそ、え、もうカーチェイスしないの……?と勝手に戸惑ってしまった。でも、裏社会の運び屋家業から抜け出せない青年がある女の子と恋に落ちて……という成長ストーリーが基軸だと考えると、その後のシーンこそ至高というかメイン。まあ、裏社会に足を突っ込んだ人間が抜け出せないまま恋愛なんてしちゃったら、大体とんでもない目に遭うって予想できるけど!ちなみに、冒頭のカーチェイス映像は何と公式が公開してくれている。サムネが非常にダサいけど映像はスタイリッシュ!いや、本当に何でこんなダサいサムネ?

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主人公、ベイビー。常にサングラスとイヤホンをしていて、裏社会の運び屋家業を務めている。幼少期の自動車事故の後遺症で耳鳴りに悩まされている。このサングラスとイヤホンの存在が鍵で、これらによってベイビーは現実世界から一定の距離を置いている印象。サングラスとイヤホンは現実を遮断する装置のような役割を果たしているように思えた。おまけに、ベイビーは寡黙だ。唯一の家族である里親のジョーやヒロインのデボラと会話するときだけ、自分の言葉を使う。それ以外ではほぼほぼ、アニメや映画のキャラクターのセリフを引用して喋っていた。テレビではたしか『ファイトクラブ』やサウスパークが流れてた。懐かしすぎる。目も耳も口も極力使用しない主人公が、手と足を駆使してカーチェイスを繰り広げるんだから、そのギャップたるや……!
そんなベイビーが大事にしているのは音楽。両耳を塞ぐイヤホンからは場面に適した音楽が常に流れている。音楽を共有することにより、ベイビーと他者との親密度は増していく。里親ジョーやヒロイン・デボラ以外にも、郵便局員や犯罪集団の一人バディと音楽を好きな者同士として言葉を交わす。特に、バディとイヤホンを共有するシーンがかっこいい!片方のイヤホンをシェアしてクイーンの「ブライトン・ロック」を聴くっていう図がエモい。犯罪集団の一人とはいえバディとは良好な関係を築けるのでは?と思わされるけれど、そう簡単には行かないところがベイビー・ドライバー。あああああ。ちなみに、この映画では、自動車のタイヤが擦れる音やエンジン音もかなりの良音で聴こえた。運び屋家業のベイビーに欠かせない音として、本編中流れる様々な音楽に合わせてセンスよく組み込まれていた気がする。これは爆音上映向きな映画だなぁ。
いかに主人公・ベイビーに感情移入できるか、共感できるか。この映画を楽しめるかはそれに懸かっていると思う。コンビニの見知らぬ店員が射殺されるのはまだ見過ごせるけど、一言でも言葉を交わした郵便局員のことは助けてあげたくなる。そういうほんの僅かな情の差で動くのが本作のベイビーだし、観客もそれに感情移入できるかで大分映画への感じ方が変わりそう。ベイビーの境遇に同情できるかが大事。一応それを意識しているのか映画では一貫してベイビー視点が続くため、ある程度の共感はしやすいかも。ただ、ベイビー視点を貫くあまり、この人物がどうしてここまで急激に心変わりを……?と違和感を覚えるシーンも多少あり。私の理解力が足りないせいという可能性も大だけども。

本編で流れる音楽については洋楽に詳しくないのでまぁーーー知らなかった!自分でも驚愕するほどに初めて聴く音楽ばかりだった。「Tequila」「Neat Neat Neat」ぐらいかな、知っていたのは。「ホテルカリフォルニア」が不吉というネタだけはものすごく理解できて、分かりやすい説明ありがとう!と感謝。そんな不穏すぎる歌詞の「ホテルカリフォルニア」を本編最後に爆音で流した舞台があってですね、『太陽2068』っていうんですけどね。脱線。強盗するために車を飛び出しかけた3人組をベイビーが一旦引き止めるのを観た瞬間、この映画を好きになった。そのときの選曲がダムド「Neat Neat Neat」で、歌い出しにちょうど合わせて3人組を行かせたかったベイビー。そのこだわり分かる~~~!歌い出しと車から出発するタイミングがちょうど合ったときの爽快感!iphoneで音楽を聴きながら歩くことが多いので、このベイビーのこだわりが理解できすぎた。ドアを開く瞬間にちょうど、「まっさらブルージーンズ!」の掛け声が合わさると気持ちいいとかあるある~~~。
リスニング能力皆無な者としては、本編で流れる曲は全て英語でいいから歌詞を出してほしかった。これ絶対に今流れている音楽とリンクしてる会話だろうな……って勘づいたところで、リスニング能力は即座にはどうしようもないっていう哀しみ。

他にも、武器商人が銃を肉に例えて説明するシーンがあまりにも定番的すぎて笑いそうになったり、コインランドリーで戯れるベイビーとデボラの甘酸っぱい雰囲気にニヤけたり、色々あった。個人的には面白くて好きな映画なので観に行ってよかった!