僕は君が

ときめきの用例採集

15 Minutes Made Anniversary

15 Minutes Made Anniversary 8/26 15時の回感想。

15 Minutes Made Anniversary というのは、6団体の劇団がそれぞれ15分ずつの短編作品を一挙に上演するイベントらしい。今年で10周年だそうで。先日一度観てすぐにチケットを買い足した劇団、梅棒。その梅棒も公演をするらしいので行ってきた。ものすっごく面白くて、当日券チャレンジした自分を褒めたい!本当に行ってよかった!
場所は吉祥寺シアター。周辺にベンチが置かれていたりして、劇場が街に根づいている雰囲気が新鮮。日比谷周辺とも少し違う雰囲気。舞台上に特にセットなどはなく、天井からは多くの風船が吊られていてアニバーサリー感あり。ミラーボールもチラ見えした。観客は年齢層も幅広く男性も多め。公式サイトはこちら。

Mrs.fictionsのあのホゥムペィジさえも

 f:id:se__shi_ki:20170908173751j:image

 

劇団別感想。劇団名横のナンバリングは公演順です。

1.柿喰う客『フランダースの負け犬』

劇団名は聞いたことがあった初めての柿食う客。先日の『スロウハイツの神様』で気になった玉置玲央さんが所属している劇団らしい。
ドイツの若き軍人ヒュンケルの高速台詞での演説から始まるこの舞台。将来有望と目されているヒュンケルはその演説で、ネロとパトラッシュのような負け犬の人生は送らない、と滔々と雄弁を振るう。そんなヒュンケルがお目付け役を押し付けられたのは、落ちこぼれと評判のお馬鹿なバラックバラックはヒュンケルとは対照的に『フランダースの犬』を好きでよく読んでいる。強制的に同室となった二人は何だかんだで絆を育んでいく。そんな中、ヒュンケルが指揮官を任された前線にて、上官の作戦にヒュンケルは異議を唱えて……、といったストーリー。
独特でスピード感のある台詞回しに最初は圧倒されたけれど、高速でのヒュンケルの冒頭演説から観客を引き込んでいく勢いが凄まじい。ただ、序盤で上官二人のセリフで聞き取れない部分が少しあったのが惜しい。スピード感に慣れていなかっただけかも。ヒュンケルとバラック、二人の若い軍人の友情から破滅までが描かれたストーリー、と書くと確実に重い悲劇に聞こえるだろうけど、独特の疾走で勢いよく駆け抜けた感がある。これは癖になる。最後、スレンダー美女の上官殿がキャスト名を淡々と読み上げていく演出が最高。シェイクスピアの「この世は舞台、ひとはみな役者」を思い出した。帰宅してすぐに柿食う客のサイトを覗いたら戯曲が無料公開されている親切仕様で、早速『フランダースの負け犬』を読んでみた。大分登場人物を削っているのかー。実際にはあと数名若い軍人たちが登場するようで、ますます青春の破滅感があって好みな気がする。タイミングよく、過去作の公演も含めたフェスティバルを行なうそうなので10月は赤坂REDシアターに行かねば。

柿喰う客


2.吉祥寺シアター演劇部『ハルマチスミレ』

美しい。美しすぎた。ここまで全てを愛おしく思える舞台に出会うなんて本当に巡り合わせだなぁと。あの日あの瞬間吉祥寺シアターにいてよかった。吉祥寺シアター演劇部とは、公募で集まった高校生たちがプロの指導の下で演劇に触れるという毎夏恒例のワークショップ企画らしい。今回はあやめ十八番という劇団の堀越涼さんが講師・脚本・演出。だから、私の見たきらめくような高校生たちが吉祥寺シアターに演者として揃ったのも15 Minutes Made Anniversaryのあの数日間だけ。うわ~~~何て尊いんだろう!高校時代の夏休みを吉祥寺シアター演劇部員として過ごすことを選んでくれてありがとうございます!と観客として感謝。
ストーリーとしては、全日制の高校生と定時制の高校生との恋愛や友情などのひと時を切り取った群像劇。全日制に入学した彼氏、家庭の事情で定時制を選択した彼女。宝塚合格を目指して毎日レッスンを受けるために定時制にした女子、その友人の夢を応援している全日制に進んだ女子。他にも全日制、定時制ともに様々な子が。ちなみに、宝塚を目指している女の子。本編では明示されていないけれど、「身長が足りなくて」という会話の節々から恐らく宝塚だろうと推測。
床面には光のライン。それは長縄を模した光で、制服を着た高校生たちがそのライン上をリズミカルに飛び跳ねていく。まさに大縄跳び。冒頭、その子たちが口を開いた瞬間、「水 金 地 火 木 土 天 海 冥」「あはれ うつくし めでたし おかし」などの単語が飛び出す。これだけで恐らく、観客の大多数が一気に学生時代を思い出したはず。個人的には「あり をり はべり いまそかり」にテンションが上がった。古文~~~!単語帳に書いてた~~~!「サイン コサイン ラブサイン」で手でハートマークを作っていたのがキュートの極み。可愛すぎる。長縄を模している光のライン上を高校生たちが飛び跳ねる。何てみずみずしいんだろう。「みずみずしい」なんて普段そうそう思わないのに、この舞台を観ている間何度そう感じたことか!セリフもリズミカルで、「既読スルーってどうよ」と尋ねた男子に女子たちが「大・罪・です!」って返すシーンが愛らしくてものすごく好き。JKには大罪だよね、そうだよね。もちろんずっと光の筋の上を飛び跳ねているわけではなく、「静」の芝居も。その中では特に、宝塚を目指している女の子と友人のダンスシーンが綺麗で、夢が詰まっていて、無性に涙が流れた。
制服姿の全日制の生徒のそばを、ばっちり化粧をした私服姿で通り過ぎる定時制の生徒。それを見て大人っぽいと、自分たちとは違うと口にする全日制の女子。一方で、定時制の女子は女子で事情がある。定時制の彼女が、全日制に通う彼氏に言ったセリフ。校則で禁止されていたはずなのに社会に出た途端化粧がマナーになると。一足先に大人にならなければならなかった不安がこの場面に凝縮されているようで胸が痛くなった。この恋人たちは冒頭、中学校校舎の窓から顔を出す彼女、地上で見上げる彼氏としてまず登場している。校舎と地上で声を張り上げて会話するのってものすごく青春っぽいな!?と感じたので、その二人が高校進学後徐々にすれ違っていく様には切なくなった。だからこそ、本編最後での二人の選択には力いっぱい拍手したくなる。美しく生きていたいなぁ、と大人でも思う。
正直言うと、今すぐにでも再演してもらいたい。何度でも観たくなる。あの数日だけしか観れないなんて惜しすぎると心底思うけれど、その潔さもまた青春っぽいですよね……。巻き戻しなんてない!っていう心意気。とはいえ、万が一にも再演なんてあったら絶対駆けつけたい。吉祥寺シアター演劇部では部誌もつけていたようで、堀越涼さんが書かれた最後の部誌にこれまた泣く。

kichi-engekibu2017.amebaownd.com

3.梅棒『BBW』

6~7月の公演『ピカイチ!』で一気に引き込まれた梅棒。今回も梅棒目当てで観に行っていたので期待大。ダンス×演劇×J-POP!ほぼほぼノンバーバルっていうのが本当にすごい。
ケーキ屋のパティシエに片思いしているぽっちゃり女子が、応援団の応援を受けて一念発起でダイエットに励みつつ告白を目指す話。こうして一文にまとめられるあらすじだけど、それをあそこまで面白く見せるのがさすがは梅棒!『ピカイチ!』からの梅棒ビギナーのくせにニヤニヤしてしまった。ライバル女子だけでなく、ダイエットトレーナー、さらには天使と悪魔まで登場するというもはやお祭り騒ぎ。今回もどの音楽も素敵で一時はライブ会場のような盛り上がりに!梅棒ファンの方が多かったのか歓声まで聞こえ、皆で手拍子をし、最高オブ最高!間違いなく劇場が一つになった瞬間。相変わらず選曲が最適すぎて、例えばぽっちゃり女子がダイエットを決意するときにはライザップのあの音楽が流れるっていう。こんなの笑うしかない。『ピカイチ!』で推しだった野田さんがこれまた最高のキャスティングで、可愛すぎる……と絶句してしまった。二の腕と腰回り細すぎません……?そんな野田さんは、12月『艶漢』舞台に出演されるそうでチケット獲らねば。
15 Minutes Made Anniversaryではそれぞれの劇団の間で長時間の暗転などはなく、次の舞台の準備ができればすぐに開始するスタイル。だから半強制的な意識の切り替えがあまり行なわれない。そんな中、吉祥寺シアター演劇部の余韻で少なからずしんみりしていた観客を、一瞬で梅棒に惹きつける引力が凄まじかった。

www.umebou.com

4.演劇集団キャラメルボックス『ラスト・フィフティーン・ミニッツ』

先日の『スロウハイツの神様』が初キャラメルボックスだったので、これで二回目。梅棒の後に休憩を挟んだとはいえ、ライブ会場のような熱狂を味わってふわふわしていた観客を、たった二人ですぐにキャラメルボックスの世界観へ連れて行った。
ストーリーは、夫婦が旅行へ行くため実家に預けてきた娘への動画の撮影を始めるシーンからスタート。今回の旅行での他愛ない出来事を口喧嘩しつつ娘へ語りかけていくにつれて、夫婦が滞在しているのは宇宙船内、数分前にその宇宙船には隕石が衝突しており……と二人の置かれている現状が明るみになっていく。宇宙旅行が一般人でも可能になっている未来の話だったのか!この中での「15分」は、宇宙船大破(だったかな……)までのタイムリミットであったことが判明した瞬間、観客にも当然二人の結末が理解できる。焦りもあって口喧嘩をしていた二人だけれどあるがままの姿を見せようと決意し、娘に向けて二人の馴れ初めを語っていく。
こうしてストーリーだけ書いていくとお涙頂戴っぽく思えそうだけど(私自身はお涙頂戴を悪いとは思っていないし好きだ)、二人の語る馴れ初めがすごく微笑ましくて、それだけでこの夫婦を一気に愛おしく感じられたから不思議。ただ、娘の名付けの件、たしかご主人のセリフで「娘が生まれたら……」とあったけれど、「子供が生まれたら……」でいいのではと妙に気になった。男の子でもあの名前多いイメージ。

www.caramelbox.com

5.劇団「地蔵中毒」『想いをひとつに』

冒頭、ものすごく構えていた作品。何故なら地蔵中毒の劇団紹介がこれです。

徹底的なまでに観客に何も残さないそのスタイルは、「意味がわからなった」「家に帰っても何一つ思い出せない」「人前でやるということについて考え直したほうがいい」等々多くの称賛の声があがっている

怖い。一体どんなものを目撃することになるんだ。戦々恐々。
竹下通りに来た日○大の女子大生三人が上半身やくみつるファッションのオシャレ三銃士に出会って……という導入。もうこの導入からして意味が分からないけれど、上半身やくみつるにはお腹が痛くなるぐらい笑った!冒頭から分かりきっていた通り、展開はもうシュールの極み。胸に爆弾入りジェンガを置かれたり、原宿を川崎にされそうになったり、自分で今こうして書いていてもわけが分からないよ!とにもかくにも、毒と不謹慎とくだらなさと下ネタを凝縮した15分。私は大爆笑してしまったけどここは本当に好き嫌いが激しいだろうと思う。上記の劇団紹介の声も実際に言われたに違いないと納得。下ネタ部分では、ああアウェーなんだろうなと感じるところが多々。一番笑い転げたのは、日○大だから!と言って稚拙すぎる集団行動を始めて全員思い切りぶつかるくだり。このシーン、「想いをひとつに」するために他劇団の人も参加していて、柿食う客の女性陣がかっこよく仕切っているのが似合いすぎた。吉祥寺シアター演劇部の高校生たちもやりきっていて拍手。ある意味、想いはひとつになっていた。
私が観た回では、全劇団公演終了後のアフタートーク「おわりの会」ゲストが地蔵中毒メンバーだった。本公演なら盛り上がるはずの下ネタがすっ……と消える、とお話をされていて客席でもそれは伝わってきたから頷くしかない。恐らくだけど本公演の下ネタより大分抑え気味にしているはずなのにそれであの雰囲気だからアウェーでの戦いすぎる。別団体とはいえ現役高校生たちも出演する舞台だから結構抑え気味にしたのかとか、その辺りを「おわりの会」で聞きたかったかも。「おわりの会」終盤は完全に地蔵中毒の独断場で、何故か人が倒れたりしてカオスすぎて爆笑した。地蔵中毒、本公演でもフルスロットルでこの調子なのでしょうか……?公演終了後どんなありさまになってるのか想像できない!

g-chudoku.jimdo.com

6.Mrs.fictions

15 Minutes Madeを主催されているMrs.fictions、今回初めて観る劇団。
舞台にはベッドと椅子。そのベッドに横たわっている男性が亡くなったところからストーリーは始まる。場所は男性の部屋。傍らには男性の母親と、彼女。その男性が不意に起き上がったかと思えば観客に対して、Q太郎でーすと明るく挨拶。ものすごくメタ的!Q太郎の姿は当然観客にしか見えておらず、舞台上ではQ太郎両親と彼女のやり取りが行なわれつつ、Q太郎がそれにツッコミを入れていく。生前は若きウェルテルのように悩みに暮れていたけれど、死んだことで明るくなったと話して観客いじりもこなすQ太郎。これが楽しい。Q太郎は恋人に、自分のことを忘れて新しい生活を始めてほしいと心から願う。これはQ太郎の両親も同じ気持ち。まだ若いのに、早くに亡くなった息子(=Q太郎)に操を立てる必要はないと諭す。そうして、Q太郎は指を鳴らすことで時間を経過させられるという、舞台では便利すぎる特技を身に着けているそうで指を鳴らす。数ヵ月後、恋人はまだいる。一周忌、恋人はまだいる。数年後、恋人はまだいる。そして、この舞台のタイトルは、『私があなたを好きなのは、生きてることが理由じゃないし』。
死別という結末を迎えた恋人たち。それでもなお変わらない恋心を抱えたままの女性、新しい人生を歩んでほしいと願いつつ見守る亡くなった男性。残された両親もまた女性を見守る。亡くなった男性は変わらないけれど、残された両親と恋人は歳を重ねていく。この表現の仕方がすごくすごく胸に詰まった。指を鳴らす音に合わせて年月が経つ。男性が亡くなったときと同じようにかたわらの椅子に腰掛けた女性が、指を鳴らす音に合わせて、眼鏡を掛けたり髪形を変えたり本当に些細な動作を行なう。それだけで歳を取っていることが如実に伝わってくるからすごい。これぞ演劇だ!と嬉しくなってしまった。じんわり、じんわりと胸が温かくなって涙がこぼれる舞台だった。

Mrs.fictionsのあのホゥムペィジさえも

 

15 Minutes Made Anniversary 公式サイト、この一節が最高。

15分なんて皆様の人生(130年くらい?)に比べたらほんの一瞬の出来事ですが、予告でも試食でもない15分の可能性を信じ続けた10年間の最新版を是非ご覧ください!

6団体の劇団全て、15分で完璧な一つの作品を見せてもらえた。休憩時間を間に挟まないことで(梅棒とキャラメルボックスとの間には休憩あり)、劇団同士の雰囲気の塗り替えがより感じられて刺激的だった。予告でも試食でもない15分、最高でした!