僕は君が

ときめきの用例採集

『グランギニョル』(ネタバレあり)

グランギニョル』のネタバレだらけ感想。TRUMPシリーズ初心者なので数年掛けて追いかけている方々からすると、今更!?という箇所であれこれ考えてる可能盛大。特にイニシアチブについての理解が浅いです。8/3の末満さんのニコ生で得た情報にも触れているのでご注意ください。
ネタバレ控えめ感想はこちら。

seshiki.hatenablog.com

ネタバレありの日替わりネタを記憶している限り書いたものはこちら。

seshiki.hatenablog.com
 
グランギニョル』の名にふさわしく、TRUMPシリーズ全体として見ると恐ろしいまでの残酷劇だった。また、TRUMPに生を実感させるためと謳われている本編中の残酷劇も全て、当の本人のクラウス(猫にご執心の時期のはず)にとっては心底どうでもいいものだろうから無駄死に、殺し損の嵐。地獄すぎる。その一方でここまで耽美な残酷劇でありながらも、ラストに仄かな希望がギリシャ神話のパンドラの箱のエピソードのように残されているという。このほんの一匙の希望こそ、14年後の結末を知っている者からすればさらに残酷すぎる絶望。丁寧に丁寧に真綿で首を絞めるように退路を断たれていく袋小路のようで、14年後の結末を知っているからこそ救いを見出せない。それでも『グランギニョル』時点ではこれが最高で最良の希望っていう仕掛けにぞくぞくするし、時間軸が公演ごとに異なるシリーズものの強みだなぁと。TRUMPシリーズもスターウォーズみたいに、時系列順か公演順のどちらで観るべきか今後話題になっていくのかな。作品によって叙述トリックが使用できるのもおいしい。それにしても、TRUMPシリーズという残酷劇の始まり(正式にはTRUMP誕生のストーリーが本来の始まり?)にここまで男女や親子の愛が詰まっているなんて予想できなかった。あああああ。頭を抱えるしかない。
グランギニョル』では既存設定であるイニシアチブについて踏み込んだ追求がなされていてさらなる深化を目の当たりにした気分。後付け設定なのか元から検討していた設定の深掘りなのかは少し気になる。ただ、この掘り下げについては次回作以降でどう扱われるか次第だろうな。それにしても、どうしてヨハネスが一瞬とはいえ自力でイニシアチブに逆らえる流れにしたんだろう。この点は本当に不思議。ヨハネスがモップか何かでうっかり転んだ隙にダリが間一髪で剣から逃れるという流れじゃいけなかったのか。掃除にハマったダリがその辺に放置しておいたモップとかさ。で、春林に「道具を片付けるまでが掃除です」と説教されたりね、何だこれ楽しい。数秒とはいえイニシアチブに対抗できる人物が登場してしまうと、じゃあどうして他の人では無理なのか、違いは何なのかとさらなる思考の迷宮に陥ってしまう。永続的なイニシアチブではない場合、掛けられた本人に強い精神力があれば打ち勝てることもできるのだろうか。ヨハネス卿最強で終了?うーん。

 

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全員は書けなかったけれどキャスト別感想。

染谷俊之さん。

衣装はロングコートで背中側には複数のファスナーがついていた。両ポケットに手を突っ込んだ体勢でロングコートの裾を翻して座るだけで絵になるってどういうことですかね。殺陣は実戦で磨き上げたような動きが多く、剣を大きく振り回して相手との間合いを取ることも。予想以上に剣さばきが凄まじくて息を止めて見入ってしまった。
名門貴族の当主、ダリ・デリコ。自身を尊敬する部下に「ダリちゃん」呼びを命じて、自分への敬意と上司命令遵守の間で葛藤する様を眺めて楽しむチャーミングなドS。「ダリちゃん」呼びを命じて周囲を困惑させる悪趣味は若かりし頃からだったんだと、『TRUMP』での貫禄のあるダリに思いを馳せてしまう。ただの人間なら持て余しそうな美貌に頓着さえしていなさそうなところがダリ様すぎる。ダリのお顔が汚れたりしたら、ゲルハルトが白レースのハンカチを差し出してくれると思うんだ。ゲルハルトとの関係は向こうからの執着が強烈なのでゲルハルトの方で語りたい。ゲルハルト絡みのダリのセリフは全て確固たる絆の上に成り立っているものばかりな気がする。「君に失望したくはなかった」「ゲルハルトを侮辱するのは許さない!」「君のすべきことをしろ。ノブレス・オブリージュ」などなど。ゲルハルトの陰を帯びた執着なんて何のその、といった感じに難なく扱えそうなのが最の高。
口が達者というダリの人物像は冒頭からの立て板に水のようなやり取りからも窺える。そんなダリが唯一言葉を濁したり最後まで言葉を吐き出せない相手がフリーダ夫人だった。最後の最後でもダリの言葉は途切れる、「俺は君を、」という形で。けれど、事切れる寸前の夫人はダリの続くはずだった言葉を完全に理解した上で、「私もあなたを愛しています」と返す。スーとの誤解について言葉足らずなダリの態度によってすれ違っているように見えてきた二人の思いが、しっかり通じていることをセリフでも明示させた上でのあの最期。『グランギニョル』でここが一番泣けて泣けて、ダリ夫妻のスピンオフを見せてくれ……!と咽び泣くしかなかった。恋愛結婚なのかお見合い結婚なのか、どっちだろう。
ラストの「負けるな、負けるな、負けるな」はイニシアチブとしては抽象的過ぎて雑でさえあるだろうけれど、親が子のために願う気持ちとして見ると温かくて切なくて、ここでもどうしても涙腺が緩んでしまった。『TRUMP』でのウルの最期を反射的に思い出すので、そこでまた今度は、やりきれなさで泣けてくる。ここだけ今までのイニシアチブを獲る瞬間のように赤い照明にならなくて、その演出もよかった。ダリの祈りに等しいイニシアチブは抽象的だろうけれど、マルコのあのイニシアチブに対してどう言葉にすれば幸福な上塗りができたのか最良の答えが見つからない。『TRUMP』の時期までウルは何とか生きているからマルコのイニシアチブにまだ負けていないことになるのか。そもそも「負けるな」という上塗りによって、死に怯えながらも生きていくために不老不死であるTRUMPという存在に焦がれるようになってしまったのか。ウルにかけられたイニシアチブについてもまだ疑問が残る。それでも、ウルはソフィを殺さなかった。これはマルコのイニシアチブに負けなかったことになるのでは。いや、もうそう思わせてくれ……。あと、あれだけウルを大切に守ろうとしているラファエロぼっちゃんが恐らくウルの出生について何も知らないとか、ラファエロ好きとしては胸を掻き毟りたくなってくる……。

 

三浦涼介さん。

由貴香織里(『天使禁猟区』『架刑のアリス』)作画のイメージ。若干反った体勢とつんと上げた顎がデフォルト。2階から遠目に見たときはベロア素材っぽいロングコートがゴシックドレスに一瞬見えた。腰部分がコルセット風になっていて大変麗しゅう。殺陣がダリとは違っていて、フェンシング寄りっぽい動きでTHE貴族様らしさが感じられて滾る。
名門貴族、ゲルハルト・フラ。同じ名門であるにも関わらず自由奔放に振る舞うダリへの反発と憧憬が繊細に表現されていて本当に性癖どストライク……。『グランギニョル』は血の呪いに翻弄され、それでもなお足掻いていく「生」の物語だと感じたけれど、数少ない生存者であるにも関わらずゲルハルトは最も死の匂いが濃い印象。キャストパレードの際にゲルハルトに纏わり付くのは本編で死亡する人物たちで、死者に飲み込まれかけるゲルハルトは常に死の間際にいることを象徴しているようだった。ゲルハルトの中で子を残すことが生きる者の役割だという強迫観念がありそうな点を踏まえると、精神的に去勢されて性的欠陥があるゲルハルトは死んでいるも同然という解釈になる。この辺りを突き詰めて考えていくと厳しい。厳しすぎる……。ただ、『TRUMP』にゲルハルトは登場しないけれど、アンジェリコの言葉の節々からフラ家および父に対しての誇りが見えている。なかなか厄介極まりない性格だけれど後継ぎになる息子を育て上げたんだと、シングルファザーのゲルハルトの奮闘が窺える。お貴族様だから別の女性を妻としてすぐ充てがわれている可能性もあるけども。自らが押し潰されかけた重圧を与えないよう注意を払いつつ(ゲルハルトの振る舞いを見ている限り正直危うそうではある)フラ家を守ることを教育してきたゲルハルトについて、今後『TRUMP』を見る度に思いを馳せてしまいそう。「マリアとフラ家を守る」という言葉の中で、フラ家の一部にアンジェリコを組み込んで考えているのかな。「マリアたちとフラ家を守る」という言葉ならここまでモヤモヤしなくて済んだというのに。最終的には大事な息子のアンジェリコも死んでしまうから、結局フラ家は守られない。それでも、死の匂いを振りまきながらもゲルハルト本人は死なない。死ねない。徹底して傍観者でいるよう定められているのかと思うほどに残酷すぎる。ゲルハルトが周囲に介入できるのは、ダリの危機を助ける守護者としての役割を果たすときだけなのでは……。「ウルが原案を書き、ダミアン・ストーンが脚本と演出を務め、ダリ・デリコが主演するグランギニョル」というマルコのセリフがある通り、ダリは強制的に最前列特等席に座らされた観客のように見えるけれど、本来なら愛妻・フリーダ夫人を自らの手で殺す役目を与えられていたわけで。ダリが手を汚すことによってグランギニョルが完結するはずだったのにゲルハルトの犠牲によって、マルコの望む形では幕は引かれなかった。これは力及ばずとはいえ(フリーダ夫人は死んでしまっている……)、ゲルハルトが残酷劇に抗えた唯一の瞬間なのかなと。
ダリとゲルハルトの関係についてはゲルハルトからの矢印が凄まじい。大人の状態でこれなら繭期の頃はもっと拗れていそうで怖いな!昏い執着を向けてもずっと変わらないからこそ、ダリはゲルハルトの憧れたり得るんだろうなと。キャストパレードでの絡みでも背後から手を這わせている姿が、ダリに見えないところで彼のために動くゲルハルトを暗示しているようで滾る~~~。ダリの名に傷が付かないようにスーを匿っている件についてヨハネスに上申するわ、ダリを死なせないためにフリーダ夫人に剣を向けるわ、汚れ仕事を自ら引き受けている感が強い、強いぞ、ゲルハルト。ラストに、「付き合ってやるよ」というダリの言葉に微笑んだのを覗き込まれて顔を逸らすというツンデレのテンプレをしたゲルハルトだけど、本編で唯一の微笑みを引き出したのがダリっていうのがね……。マリアといるときも他の誰といるときもその表情を浮かべ(られ)なかったゲルハルトが……。ダリとゲルハルトについてはTRUTHとREVERSEというよりも陰陽の要素の方が濃く感じた。ダリの全てに憧れ焦がれるゲルハルトはダリにはなれない。また、ダリはダリで絆を感じてはいるけれどゲルハルトになりたいといった憧れは抱いていなさそう。そこがこれまでのTRUMPシリーズで対として表現されてきた人物たちとの決定的な違いのように感じて、こんなのますますゲルハルトを好きになるしかない。棄教した直後にヴラド機関付きに任命するとか、ヨハネス卿は鬼かな!??っていう仕打ちを受けても耐えていそうなところがこれまた好き。

 

東啓介さん。

高身長!足が長い!二次元から抜け出てきたような出で立ちに平伏す。厚みのあるJPEGかな???この舞台にはどれだけ規格外の三次元の方々が揃ってるんだ。中国武術は肘を深めに引いたり膝を大きく曲げたり派手な動きが多いからあの長身に似合いすぎていて、中華系ヴァンパイアハンターというキャスティングに感謝。二次元っぽいセリフが一番多い役回りという印象。「黙らっしゃい」「護衛任務はここまでです、ここからは自分の身はご自身でお護りください」「グーで殴って差し上げましょう」などなど。二次元キャラってこういうこと言う言う~~~と勝手にニヤニヤしてしまった。
ヴァンパイアハンター、李春林。身体のバランスと髪型が久保帯人(『BLEACH』)作画っぽい。これ、私の中ではものすごく褒めている表現だけど確実に伝わらなさそう。今までダンピールと言えば負の概念しか持たされていなかったはずが、春林の登場によって新たな可能性が提示されたのでは。稀有な存在すぎる。ダブルピースをしての「ポジティブダンピールの出来上がりです」にはかなり笑えたけれど、ああいう風におどけて相手の懐に入り込んでいるのかとも勘繰れて最高。
奥の手は予想外すぎて興奮するしかなかった。そういうのアリなんだ!?イニシアチブの可能性無限すぎる……。まず、どういうきっかけでこの奥の手に行き着いたのかが知りたい。危機的状況に陥ったときに春林の命令で試してみたのかな。ああいう主従関係逆転にはどうしても滾ってしまう~~~。しかも歌麿は気乗りしてないっていうのが最高かよ~~~。完全に逆転したのかと思えば、「下がっていなさい」とあくまでも春林が歌麿に命じる立場っていうのが、二人の主従関係の秘めたる可能性を感じられる。本当に危険になったときは、自分を置いて逃げるよう歌麿が春林に命令とかしそうだなと妄想。それなのに、8/3ニコ生で、次の任務が春林にとって最後の任務だと末満さんがさらっと明かされていて呆然とした。えええええ。最後?最期!?負傷によりヴァンパイアハンター引退=最後の任務ならまだいいけど、最期の任務だとしたら厳しい……。二人には、ちょくちょくダリ邸に顔を出してラファエロぼっちゃんとウルぼっちゃんに稽古をつけるっていうスピンオフを(勝手に)期待していたのに……。

 

松浦司さん。

髪型や衣装の中華っぽさが『最遊記』を思い出す。こういう、分かる分かる~~~と頷ける外見の作りこみって大変だろうな。春林と歌麿コンビは二次元みに溢れすぎていて、最遊記とか黒執事に絶対出てるやつ……と冒頭から震えた。こういう二人組絶対いる。背後にジャンプするときなどの身のこなしが綺麗だなぁと思ってwikiったら、USJのダンサーさんだったのか。なるほど。一挙手一投足が犬をイメージしているようで愛らしくて、もうそれだけで春林と歌麿コンビ大成功じゃん!??と拍手喝采したくなる。春林の足元にまとわりつく姿はまさに子犬。涅槃像ポーズは『LILIUM』を思い出して懐かしい。
ヴァンパイアハンター歌麿。まず、師匠呼び。次に、第三者からの飼い主・飼い犬認定。第三に、主従関係の逆転要素あり。こんなの滾らない方がおかしいでしょうっていうぐらいの、古今東西の主従関係設定の美味しいところてんこ盛りの春林・歌麿コンビ。弟子が師匠を噛んでイニシアチブを獲るっていうのがもう設定の勝利すぎる。ヴァンパイアハンターたちの冒険活劇スピンオフが見たい。何でもスピンオフを求めがち。ダリ邸から立ち去るときの言葉はたしかに定番だろうけれど、定番だからこそやっぱり聞きたいよね!と全面的に賛成しかない。
イニシアチブについては対象者の力の覚醒はまあ納得だけど、元人間で後天性吸血種だから効果は1時間なんて新事実すぎる。最初に試したときは絶対に効果の程度なんて分かっていなかっただろうから、自分自身を使っての春林の実証実験の可能性もありそう。ヴァンパイアハンターたちも今回のバルラハ・ベル同様に、イニシアチブの可能性については探っていそうなところがある。

 

栗山航さん。

マルコ・ヴァニタス。ウル、マルコ、ダミアンとややこしいので、マルコで統一。よく転ぶ人を怪しみがち(経験則)なので、マルコは冒頭からフラグが立ちすぎていた。しかも、姓がヴァニタスって!ほぼほぼ分かりきっていたことだけど、あの静けさの中で響き渡る「ダリちゃん」は、これまで笑いを生み出してきた「ダリちゃん」と同じ呼称なのに落差が激しすぎてぞっとする。ただの人畜無害の部下ではなく全ての黒幕だと判明してからの感情の振れ幅が凄まじくて目を奪われた。打って変わって殺陣もお見事すぎる。
マルコ、マリアさんへの思い入れが半端ない印象。愛しているようにさえ見える。ダリ父への恨みよりもゲルハルトの非道な行いを糾弾するときの方が激しい怒りが感じられて、そもそもこれは誰の怒りなんだろうと考えて哀しくなった。マルコの中では明らかに複数の人格がせめぎ合っている。マルコvsダリ&ゲルハルトのとき、ダリへは打撃攻撃が多い一方でゲルハルトには容赦なく剣を振るっているように感じられて、ゲルハルトのことは確実に殺しに来ている!と思ったけれどこれは思い込みかもしれない。残酷劇の最後を彩るためにダリは生かしておかなきゃいけないからそれ故の手加減なのか。自分の子供(=アンジェリコ、ウル)には何の感慨も持っていなさそうなマルコが、マリアの受けた仕打ちにだけはひどくナーバスになっているのが二人の関係を色々考えさせられる……。14年後のアンジェリコの結末も、ゲルハルトへのさらなる復讐のようにも感じる。ただ、フラ家の経緯を知ってから改めて考えてみると、マルコを解任だけに留めたゲルハルトが意外。アンジェリコの秘密が明るみにならないよう口封じでマルコを殺しそうなものなのに。
気になる点は、終盤でマルコが口にした「何手先も読むのが~」のセリフ。冒頭のチェスシーンでヨハネス相手にダリが口にした言葉だけれど、その場にマルコはまだいない。マルコはこの時点でもうヨハネスのイニシアチブを獲っているから、ヨハネスの記憶を把握した上で同じセリフを意趣返しとして言ったってことでいいのかな。イニシアチブ関係がまだまだ曖昧にしか理解できてなくて、変なこと書いてないか不安しかない。

 

田中真琴さん。

スー・オールセン。一回目の観劇のときにどこかで見たことあるなーとずっと考えていたけど、感覚ピエロ「拝啓、いつかの君へ」のMVの人か!女性同士がちゅっちゅとキスしてるシーンが冒頭繰り広げられるMVだったから記憶に残ってるんだ。モデルが今まではメインのお仕事だったのかな。でも、あの鮮烈な目力と蓮っ葉で皮肉めいた話し方がすごくスーらしくて合っていた。教会でダリを庇ったときのシンプルな衣装でさえ驚くほど可愛い。ダリに背後から捕らえられたあのシーン、運よく目の前の席のときがあったけれど、美と美の掛け算で逆にどこ見よう!?と慌てた。本当に可愛い。
根性が逞しいスーが、ダリ邸でハンスを(主な)相手として起こす騒動スピンオフが見たい。下着を一緒に洗われそうになって、本当にイヤ!とか言うスーが見たい(日替わりネタ)。スーはどう考えても潜入スパイには向いていないだろうよマルコ……とまず人選から異議を唱えてあげたすぎる。ダリと結構初期からじゃれ合うわ、フリーダ夫人に浮気相手(のふり)として立ち向かうような女の強かさはないわ、スーの性格的にダリ邸に染まるのが目に見えてる。フリーダ夫人とスーの間でドロドロ昼ドラ展開にならなかったのはそれぞれの性格が良かったからだろうし。そんなスーがマルコに対してはあまり蓮っ葉な感じじゃないのが可愛らしかった。マルコの中でほぼ消えかけていたウルの人格に助けられるって展開は王道中の王道だろうけれど、あの一瞬でスーのこれまでが少しでも報われていたらいい。マルコのあの態度的に、スーが身ごもったときにはまだウルの人格が多少は残っていたんだろうか。

 

愛加あゆさん。

気高く美しきフリーダ・デリコ夫人。囁きかけるようで凛とした声が麗しい。指先の仕草までエレガントでさすがはフリーダ夫人。もう全面的にフリーダ夫人の信者なので、ダリは言葉足らずすぎるんだよ!!!と延々言ってやりたくなる。初登場時だけキャラ違わないですか?と思うほど、最初は昼ドラ展開が始まるのかとドキドキした。「綺麗な顔……、この顔でダリを誑かしたの」って完全に牡丹と薔薇的展開の序章感。スーだけたわしコロッケ出されそうな雰囲気。本当に裏がない高潔な夫人なのだと中盤以降は理解したけれど、そんな夫人が「誑かしたの」なんて言葉を使うほどダリとスーの関係を誤解して追い詰められていたのかと思うとやりきれなくなる。『グランギニョル』中最も高潔だと思ったのがフリーダ夫人のこのお言葉、「幸せであろうと努力しています」。幸せ「になる」じゃなくて幸せ「である」とおっしゃる姿勢が素晴らしいと信者としては思いました。生きることはありとあらゆる呪いに縛られることなのかと絶望さえ感じる世界の中で、フリーダ夫人のこの言葉は尊い。男性陣の振る舞いに対してはおいおい……と思うこと多々だったので、ノブレス・オブリージュ言ってる場合じゃないよ!まずは自分の幸せからだよ!とツッコミを入れたくなってしまった。多分そんなツッコミは求められていない。ダリに抱きかかえられた体勢でのフリーダ夫人の最期は美しくて哀しくて、やっぱり泣ける。
黒薔薇館の歌姫が歌う「今宵は黒き夜」、最高オブ最高。いつまででも聴いていたくなる。音源発売してほしい~~~。「今宵は黒き夜、血も肉も分かち合おう」のフレーズで「血も」のところで口元に手首を近づける振り付けが吸血行為を示していて色っぽい……。

 

藤木修さん。

繭期三人組の一人、アンリ・ガトー。死にたがりのアンリ。666人のイニシアチブに耐えて不完全ながらも不老不死を手に入れて、バルラハ・ベルが恐らく最も大切にしている存在。パンフレットの写真、バルラハがアンリじゃなくオズを見つめているのが違和感すぎた。白のフリルをふわふわさせた繭期三人組のアクションはどれも好きだけど、特にアンリは小柄ながらも動きが俊敏でキレがあった。カーテンコール時に少し緊張して客席を見回している姿が印象的で、素晴らしかったです!と伝えるためにとにかく拍手した。
アンリについては死にたがりの原初信仰者という矛盾が気になる。死にたいという願望は繭期の一症状に過ぎないんだろうか。実験を受ける前はごくごく普通の原初信仰者だったけれど、不完全な不老不死を手に入れて永遠の繭期にいるうちに死への欲求に取りつかれた感じ?バルラハの実験、罪深すぎるでしょ……。ただ、バルラハの実験で生き残ったのが三人でまだよかった。共依存関係に是非はあるだろうけど、三人組の誰も、一人きりじゃあんな繭期に耐えられない。キキとアンリの姉弟のような気安い関係にはほんわかした。コクーンの摂取を止めれば問題なく成長するようだから、繭期を脱したアンリがまだ死を望むのかも次回作以降のどこかで少しでも触れられるといいな。

 

大久保祥太郎さん。

繭期三人組の一人、オズ ・ローナン。69人のイニシアチブに耐えて、未来を予知する力を手に入れたオズ。この予知が逃亡したキキの未来に希望を灯しただろうことを考えるとオズも少しは報われたのかな。「キキなら繭期でなくなってもきっと誰かを愛せるよ」と伝えるオズは兄のようで友達のようで恋人のようで、繭期三人組は互いに色々な役割を分担しながら擬似家族として暮らしてきたんだろうと想像するだけで泣ける。オズとキキの別れのシーンでも咽び泣いたし、戦いながらもキキが無事に逃げられたか気にするオズの言葉には嗚咽が漏れそうになった。突然の死で全てを奪われがちだったTRUMPシリーズにおいて、お互いまだ生きている状態で、別れを告げるシーンにここまでちゃんと時間が割かれていることはなかった気がする。
オズもアンリ同様、繭期の症状で死を受け入れているのか不明。自分の予知能力によって「僕は死ぬ」と語っている姿を見る限り不老不死の概念に取りつかれているようには感じられないし、むしろ死を受け入れてさえいる。パンフレットの相関図で繭期三人組が原初信仰者とされているのは便宜上なんだろうか。

 

田村芽実さん。

繭期三人組の一人、キキ・ワトソン。188人のイニシアチブに耐えて圧倒的な戦闘能力を手に入れたキキ。それぞれが耐えた人数の数字にも意味があるのかな。真っ白な衣装にツインテールで可愛い!冒頭から雰囲気が凄まじくて、声を発したときには一瞬で場を掌握していたような気さえする。田村芽実さん凄まじい。「愛してあげる!」が決め台詞として頻出するけどその意味合いはシーンごとに異なる。好意も殺意もひっくるめた「愛してあげる!」の言い方がすごく好みだった。繭期の症状として目に映るもの全てが愛おしくなってしまうキキは、オズとアンリに向ける自分自身の感情にも時折自信が揺らいでいそうでしんどい。オズとアンリが目の前にいるから繭期の症状として愛しているのか、仲間として自らの感情で愛しているのか。その境目なんてきっと本人にも分からない。何て罪深すぎる繭期症状なんだろう。
「永遠の繭期を生きるのよ」というセリフがあるから、キキは繭期三人組の中では比較的原初信仰寄り?ただ、永遠の繭期を生きない限り、繭期三人組の擬似家族的関係は続かない。それを三人は確実に理解はしているだろうから、一人も喪いたくないという恐れからああいうセリフを発した可能性もあるのかな。アンリの願いでキキが歌った子守唄の一節に「眠れ、繭期の子らよ、同じ夢を見ながら」とあるけど、共同幻想ユートピアを思い出すしかないじゃないですか、こんなの!同じ夢を見る~~~♪
マリーゴールドの先祖だとほぼ確定したキキ。オズの予知能力は仲間を喪って独りぼっちになったキキの今後の支えになるだろうし、観客にとっても希望。繭期でなくなってもきっと誰かを愛せると言われた通りに愛せる人と出逢ったキキが子供を産むという未来が約束されている!8/3ニコ生によると、『SPECTER』のグレコと出会ったら……と末満さんがイメージされた上でキキの逃げる方向の演出をされたそうなので、グレコとキキのカップルか~~~!キキの子孫のマリーゴールドの結末は知っているけれど、キキ本人だけでも幸福になってくれる可能性があるなら少しでも救われる。

キャスト別感想終わり。

 

『SPECTER』がソフィ誕生の物語である一方で、『グランギニョル』はウル誕生の物語となった。出生からして曰くつきの二人のダンピールが14年後に同じクランで出逢うという血塗られたボーイミーツボーイ。そうして、繭期がTRUMPに繋がっているという仮説が正しいのならば、『LILIUM』でソフィの犯した所業も図らずともTRUMPに捧げる残酷劇になっているという地獄。『グランギニョル』で多数の命が果てた末の希望の象徴だったはずの子供たちが14年後、『TRUMP』で呆気なく死んでいく。その遥か未来の『LILIUM』では、希望という意味から名付けられたはずの「ウル」が少女たちの命を強制的に永らえさせる薬の名前になっている。考えれば考えるほどに、TRUMPの世界全てが丁寧に丁寧に真綿で首を絞めるように退路を断たれた袋小路。
Eli, Eli, Lema Sabachthani?と無意識に呟いてしまいそうな残酷劇、素晴らしかったです。絶望に傾いた天秤がほんの少しの希望で容易く揺らされて、もう完全に末満さんの掌の上で転がされている。次は、末満さんがニコ生で語ってらしたラファエロとアンジェリコの青春感が漂う『COCOON(仮)』が観たいです!寄宿舎学校でのボーイミーツボーイなんて『ばら色の頬のころ』しか思い出せないので期待大。