僕は君が

ときめきの用例採集

少年社中『モマの火星探検記』

8/10ソワレ公演のネタバレあり感想。乃木坂の生駒里奈ちゃんが出演ということで気になってチケットを獲ったこの舞台。あらすじは以下の通り。

モマの物語

宇宙飛行士のモマは、父との約束を果たすために人類初の火星探検に挑む。
「人間はどこからきたのか、なんのために生きているのか」
火星に向かう旅の中でモマはその意味を考え続けていた。
そんなある日、モマの前に「幽霊」が現れる。
驚きながらも奇妙な出来事を受け入れる中で、モマは少しずつ人間が生きる意味について考えていくのであった…。

ユーリの物語

北の国に住む少女ユーリの父親は宇宙飛行士だった。
彼女が生まれる前に人類初の火星探検に旅立ち、帰らぬ人となったという。
ユーリは行方不明となった父親にメッセージを送ろうと、仲間と小型ロケットを作り始める。
やがて、失敗を繰り返すユーリの前に一人の「幽霊」が現れる。
幽霊はユーリに問いかける。
「宇宙の境界線はどこにあると思う?」
その姿にどこか懐かしさを感じたユーリは、幽霊との対話を繰り返しながら、仲間たちと小型ロケットを完成させる。

果たして、時空を超え、モマとユーリの思いは交錯するのか―。

【モマの火星探検記】

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宇宙飛行士の毛利衛さんが書かれた児童文学を原作にしているけど、どこからが舞台オリジナル要素かものすごく気になる。あらすじに書かれている通り、“幽霊”が出てくるんですよね。宇宙飛行士なんてまさにリアリストといったイメージを持っているけれど、宇宙だからこその神秘的パワーを感じる機会もあったが故のこのストーリーなんだろうかと勝手に想像。あらすじには目を通していなかったから、そういう非科学的要素も組み込むのかと観劇中に少し驚きはしたけれど、ファンタジーとリアリティの比率は個人的には大して気にならなかった。
舞台上にはストーンヘンジだけで、そこが火星にもロケット内にも子供たちの秘密基地にもなるシンプルな造り。その時々の小道具やキャスト陣の演技力によって場所への説得力が増していた。宇宙船外での探索活動のとき宇宙飛行士たちは透明の球体を常に手に持っていて、それだけでヘルメット姿なのが想像できて、この舞台の演出には何度もなるほどーと心の中で頷いていた。照明も美しいんだ、これがまた!特にラストの瞬きには息を呑むしかなかい。音楽も壮大さを感じさせるものやテンションが上がるものなど色々あり。公演期間中だけ公式ブログでその音楽のダウンロードキャンペーンが実施されていたから全部ダウンロード済み。特にユーリが歌うテーマソング「a message to other world」がたまらなく好き。パンフレットには歌詞も載っているから購入してよかった。ただ、パンフレットといえば、載っている写真がどれも舞台上の衣装とは違っていて、あの衣装が見たかったなぁと少し残念。その他のグッズも全て舞台とは違う衣装。特に生駒ちゃんなんですが、パンフレットのあの衣装・髪型・メイクより絶対絶対、舞台本編の方が可愛いと思う。その写真はゲネプロの様子がレポートされている以下の記事で。

natalie.mu


キャスト別感想。
矢崎広さん。モマ。ロミジュリ以来の矢崎さん。ベンヴォーリオ@ロミジュリのときも感じたけれど、その役としてこれまで生きてきたようなリアリティが凄まじい。当て書きかと一瞬考えるほどに矢崎さん演じるモマは無理がなく自然体で、他の宇宙飛行士たちとふざけるシーンなどはモマの日常を覗き見ているような感覚にさえ陥った。いつまででも見ていたくなるああいう素の雰囲気を意識的に作り出せるってすごい、ため息が出てしまう。宇宙飛行士として旅立つ前にプロポーズした恋人にフラれて、その失恋のショックはまだ癒えていない上に、周りからはひたすらそれをネタにされるっていういじられキャラの愛くるしさよ。モマとミヨー、モマとロボットたちの掛け合いが特に好きで、いじられキャラからツッコミ役までこなすモマは完全に苦労人。改めてプロポーズしたときも「女心が分かっていない」とにべもなく断られて、そのときのふらふらと倒れて伏せるシーンが可愛すぎた。その後、ムーンプリズムパワーメ~イクアーーーーップ!って高らかに叫ぶ矢崎さんは最高オブ最高。まさかのセーラームーンで爆笑した。このシーンはDVDででも目撃する価値があると思うけどあのくだりは日替わりネタなのかな?そこまでコミカルに振り切ってみせた一方で、父親との約束である生きる意味について考え続けたり、辛い現実を抱える仲間に真摯に寄り添おうとしたりするときに見せる繊細さが、モマをさらに魅力的で応援したくなる人物にしていたと思う。自分を残して去っていくロケットを見送るときに「いってらっしゃーい」と言うのがモマらしすぎる。

生駒里奈さん。ユーリ。お目当ての生駒ちゃんの可愛さは振り切れてた。ユーリは一挙手一投足が可愛くてたまらない。髪型(若干暗めの金髪がここまで似合うなんて!)も衣装も異国の少女感たっぷりで、おまけに「僕」っ子ですよ!こんなの好きになるしかない!ユーリはどこまでも天真爛漫な子でフラット。仲間たちの一人がロケット作りに参加できなくなっても、ロケットを母親に壊されても、「絶対にあきらめない!」とまっすぐ前を向く。目の前に突然現れた謎の“おじさん”ともすぐ仲良くなれる。どんなトラブルがあっても挫けることがなく陰の感情を本当に見せなくて、その素直さと熱意だけでも拝みたくなるほどに尊かった。こういうリーダーだからこそ、ロケット作りの仲良しメンバーたちも色々と頑張れるんだろうなと。そのメンバーたちの掛け合いもものすごく少年少女感に溢れていた。冒頭で歌うシーンは少し緊張しているのかと思ったけど、“おじさん”と二人で楽しそうに歌うところはチャーミングすぎて、ユーリと“おじさん”の関係性を推測していたから余計に微笑ましくもなった。父親に写真を送ろうとした際、女の子らしくした方がいいという仲間の意見で頭に大きなリボンをつけて登場してくるときの不貞腐れたような、少し恥ずかしそうな表情もよかった……。思い返せば思い返すほどよかった~~~。そのリボンをつけたときの写真も載っているから上の記事はぜひ見てもらいたい。囲み取材時に「今日、毛利衛さんに会えると思っていなくて『宇宙飛行士に会える人生なんだ、私』ってびっくりしちゃいました」って素朴な感想言っちゃう生駒ちゃん最高かよ~~~。

松田岳さん。ガーシュウィンストーンヘンジの前でキャスト陣がダンスするシーンがあって、ガーシュウィンには目を奪われた。動きが滑らかでキレが恐ろしく違う。パンフレットを読んでも経歴など詳細が分からなかったので(モマのパンフレットは人物紹介がものすごくシンプル)、wikiったところ、驚くほど特技が数多くて平伏した。天から何物与えられている人なんだ、すごい。自国が水没の危機に瀕していても動揺を見せずに明るく振舞っていたガーシュウィンが終盤、自分を助けるために逆に火星の深い穴に落ちることになってしまったモマを助けようと取り乱すところで、モマの結末について分かっていたこちらもやっぱり切なくなった。

谷口賢志さん。ホルスト。『Ye』で観たことがある谷口さん。先日行ったイベントで谷口賢志さん推しの方のアンケートが読まれたので、谷口さんについて少し詳しくなれた。パンフレットを見たところ、『どうしても触れたくない』の外川さんとか『ジョーカー・ゲーム』の結城中佐とかもされてるのか。両方、原作ものすごく好きなやつ~~~。ホルストは真面目な顔して冗談を言ったりするところがあって、宇宙飛行士たちの中で一番ギャップがある人物のように感じた。モマとのレコーダーのくだりには笑った。火星探索のために家族と離れている間に子供が事故で亡くなってしまうけれど、その子の幽霊がロケット内に何故か現れて、ホルストは二人で楽しい時間を過ごす。この非科学的要素には驚いたけど、ホルストと子供がものすごく楽しそうに会話してる姿を見ていると、まだまだ解明し切れてない宇宙ではこういうこともあるのかもしれない……あればいいな……と思ってしまう。

鎌苅健太さん。ミヨー。ものすごくよかった、ミヨー!!!今日の献立を訊かれたときの「僕たちと地球を繋ぐ一本の糸……そうめんだ」の返しが強烈すぎてお腹が痛くなりそうなほど笑った。あれ、ミヨーの一人称って「僕」で合っていたっけ……。そうめんの衝撃が大きくて一人称が曖昧になってる。この献立やプロポーズ失敗後のモマとのやり取りは日替わりネタなのかも。自国とバルトークの国との石油の権利を巡っての戦争危機についても動揺せず、二人で笑って写真を撮ろうとするのが素晴らしい。ミヨーが一番、端々でリアリストだと感じた。それぞれが祈りを捧げるシーンのポーズに注目していたけど、ミヨーがどの国出身なのか一番謎。宗教と国籍は直結はしないし、それぞれの名前の作曲家の国籍も関係なさそう。

 

“おじさん”・モマ・ユーリの関係性については序盤で大体推測できるけど、そのことによって何も損なわれないのがこの舞台の持つ強みだと感じた。予想した人間関係で合っていたけれど、だからこそ折々のシーンで切なくもなったし微笑ましくもなる。全部分かった上でもう一度観てみたくなる舞台。冒頭の「初めまして」に込められた意味よ……!
児童文学だから大分意識的にそう描いている部分はあるのかもしれないけど、父親とモマの関係が一種の見本のように素晴らしい。「人間はどこから来て、何のために生きるのか」と尋ねたモマに対して、父親は「一緒に考えてほしい」と提案する。答えを与えるでも強制的に考えさせるでもなく、子供に寄り添おうとするこの姿勢が素敵すぎる。そうして見つけ出した答えをモマが父親に語る場面は、これまで二人を見てきたからこそたまらなくなった。その一方で、母親とユーリの関係は中盤辺りまで不穏の一言で、母親は姿さえ見せないまま、ユーリたちの大事なロケットを破壊までする。ユーリの母親と叔父だけが現実を突きつける厳しい大人の役割を一気に背負わされているように見えるけど、母親の過去が明るみになるにつれて、モマとユーリの交錯する二つのストーリーを結びつける重要な存在だと分かっていく。この部分の過去と現在が同時に進んでいく演出が舞台ならではのもので、そういうのが大好きな私は内容には関係なくニヤニヤしてしまった。過去の経緯も説明した上に現在の状況も一気に把握できる、舞台だからこその演出!

この舞台で印象に残ったセリフは、「宇宙の境界線はどこにあると思う?」と「全部繋がってるんだ!」。“おじさん”がユーリに投げかけた「宇宙の境界線はどこにあると思う?」の答えはぜひ舞台で確かめてもらいたい。大楽ももう迎えたから再演を願うしかないんだけども、DVDが3月に発売される予定!