僕は君が

ときめきの用例採集

『熱海殺人事件 NEW GENERATION』

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新しい舞台の情報を見ていたら味方さん・多和田さんがキャストに載ってたので、お二人が共演されてた『熱海殺人事件NEW GENERATION』の感想を書いてみる。3/4()にマチネ公演を観ました。

 

登場するのは4人の役者。
木村伝兵衛部長刑事、その部下で婦人警官の水野朋子、新任刑事の熊田留吉、そして熱海で女を殺した容疑者の大山金太郎。
なぜ、熱海ではならなかったのか? その関係は?
そこには切なくも美しい、秘められた思いがあった──人が人を殺すには理由がなければならない。それも、13階段を登るにふさわしい愛が……。

 

スモークが焚かれ、爆音のチャイコフスキー白鳥の湖』が流れるなか、真っ赤な照明を浴びた木村伝兵衛がどこかに電話をかけている──初演から変わることのないオープニングだ。
ここは桜田門。警視庁、木村の部屋。
訪れたのは、本日、赴任したばかりの熊田留吉。富山の田舎者、と一瞥し、水野との関係も隠さず、冷ややかな対応で迎える木村。敵意を剥き出しにする熊田。しかし、木村は彼のためにひとつの贈り物を用意していた。
それは、熱海で起こった殺人事件。

浜辺で発見された、女の遺体はたいそう不細工だったという………彼女の同郷で容疑者とされた大山金太郎が、ド派手に登場。しかし、その顎には無精髭、瞳はつぶらで純朴。とても女を殺すようには見えなかった。しかし、大山は言い切る。
「俺を死刑台に送ってくれ」
単なる痴情のもつれ、では片付けられない「理由」がなければ、この殺しは成立しない。
熊田に与えられたのは「事件解決」ではなく、容疑者を「立派な犯人」に仕立て上げ、13階段を登らせる、というもの。

 

saizenseki.com

 

 

NEW GENERATIONと銘打たれてるけれど、私には初熱海殺人事件。初つか舞台。キャストについては2.5次元で人気の方々なのかな?っていう知識。オタクだけども刀剣乱舞にも2.5にも詳しくないから、ファンサービスだろうアドリブ部分で戸惑う場面が少し。味方さんが刀剣乱舞の歌を口ずさんで舞台袖へはけていくシーンもあったので、刀剣乱舞ぐらいは嗜んどいた方がより盛り上がれたのかも。刀剣乱舞って歌ってる!と雰囲気で笑えたから私は満足だったけれど。ただ、この反応は、「刀剣乱舞」というゲーム自体は知ってるから、というのも大きいかもしれない。「刀剣乱舞」の存在さえ知らない人は本当にぽかーんなのかな?

今回、NEW GENERATIONとしているから時代背景にも変更があるのかと思ったけど、あらすじ的には大きな変更はなかった模様。70年代の空気や時代に即した用語って、もはや現代ではその熱を同じ程度には感じ取れない。でも、貧困による格差みたいに、現代に通じる部分はたしかにあるわけで、NEW GENERATIONである観客に配慮して(阿るとも言えるかも)時代背景を改変なんてしなくてよかったな、と。

 

感想としては、ただただ面白かった。機関銃みたいに繰り出される台詞の濁流に最初面食らったけど、こういうの好きだ!って段々ニヤニヤしてしまった。ものすごく好み。途中、すごく胸が躍っていい笑顔になってた自覚がある。毒が効きすぎてるセリフの応酬で笑えない部分はあったけど、そういう不謹慎さもこの暴走めいた舞台には必要な気がした。眩しいを通り越してどぎつさまで感じる照明に毒々しい時事ネタ、弱者への容赦ないセリフ、それでも一貫してぶれない軸、これら全部がつか舞台を作り上げてる。独特の理論と笑いを織り交ぜながらスピーディーに話が展開されていくうちにいつの間にか崖の手前まで来ている、みたいな危うい感覚がすごく癖になった。ああ再演してほしい!

 

味方良介さん。木村伝兵衛部長刑事。タキシード、蝶ネクタイ、撫でつけた黒髪、いい声で弾丸みたく撃ち出されるセリフ。下卑たセリフと品の良い雰囲気がここまで混ざり合ってると五感全てで惹き付けられる。眩しすぎる照明を従えて、爆音で轟くチャイコフスキー白鳥の湖に合わせての伝兵衛の激しい指揮。神々しさまで感じさせるのに、水野さんとのじゃれ合いは可愛すぎる。見得を切るところが本当に好き。渚のシンドバッドのダンスシーン、一番目が釘付けになりました。優雅すぎでは??貧乏人や田舎者に容赦ない罵声を浴びせたかと思えば、常人には理解できない愛情と美学で水野さんや熊田、大山に接する。場の支配者として君臨し続けてのあのラスト。木村伝兵衛部長刑事大好き……。

カーテンコールでのティッシュ撒きの前に、「複数個取る人がいるらしいですけど、いけませんね」といった感じのことを味方さんがおっしゃっていて、その言い方がすごく可愛かった。あと、ティッシュ投げるときの思い切りの良さが素敵。伝兵衛刑事って冒頭からなかなか無茶な理論をまくし立てていくんですけど、やっぱりそこには一般常識を強引にねじ伏せるほどの力強い説得力が必要なわけで。そんな伝兵衛刑事を見事に演じきった味方さんには、本当にいいものを見せていただきました!

 

多和田秀弥さん。富山から来た田舎の刑事熊田留吉。声が擦れてる気がしたのは元からなのか、それとも今回の舞台の影響?舞台そのものの速度に面食らってた序盤、多和田さんの声をなかなか聞きとれなかった自分が悔しい。謎の山崎賢人さん推しと壁ドン攻撃がツボ。イケメンって要素を具現化したらこの人になるのでは??って思うぐらいスタイリッシュな見た目。ただ、この舞台では、まともな人なのかと最初思っていたらどんどん露わになっていく熊田の野蛮さが、アンバランスな形で剥き出しになっていてすごくよかった。貧乏人は痴情のもつれでしか人を殺せないんだと思われるぞ、といった感じの言葉を大山にぶつけるシーンがあって、貧乏から這い上がろうともがく熊田の心情を思うと切なくて息を呑むしかなかった。また、そこまで大山に言い続けた熊田が選択するラストが尊い

 

黒羽麻璃央さん。犯人大山金太郎。登場シーンからぶっ飛んでて驚愕。前方サイド席の人たちが開演前から盛り上がってたのは演出を承知済みだったからか~!黒のキャップにサングラス、目に眩しいオレンジのつなぎ姿で前前前世を歌いながら登場なんて気が狂い過ぎてて楽しい。拘留されてる犯人が前前前世を歌って登場する。この字面だけでヤバい。最高かよ。舞台上で一番感情の変化が目まぐるしい役どころだった気がする。刑事たちの説得によって立派な犯人(このパワーワードを納得させられる伝兵衛刑事の偉大さよ)を目指そうとしたかと思えば、一転して心を閉ざして投げ遣りになる。アイコちゃんと二人で行動する過去の再現場面では、大山の「喜」「楽」の感情は痛々しいぐらいに浮いていて、二人の心の距離を痛感させられた。一番好きなのはアイコちゃんと並ぶ砂浜のシーンでの「だめだ」のか細い一言。その声の震えが耳奥に残った。

 

文音さん。水野朋子婦人警官。紅一点。水野さんのときはお色気ありで美脚。スーツ姿がかっこよすぎる。伝兵衛刑事との駆け引きでは色気というより殺気を纏っていそうなところも好き。大山の隣でアイコちゃんを演じるときの表情も逐一どれもいい!

 

強制ゲスト()の細貝さん。初めてお名前を知ったんですけど、無理矢理舞台に上げられた挙句、私物眼鏡を割ってしまうという悲運まで見せられるともう色々気になって仕方ない。舞台とか出演されるなら観に行きたい。日替わりでゲスト(その日観に来た俳優さん?)を舞台上に上げる今回の演出は、この舞台に限って言えば違和感はあまりなかった。開演前はつか氏へのお手紙朗読があるし、犯人は前前前世歌って登場するし、何でもありの舞台だっていう観客との暗黙の了解が取れているからかも。細貝さんはその後も、油断してただろとか不意打ちで呼び掛けられたりしていて、観客に笑いを振りまいてくれた。眼鏡、どうなったんだろう。

 

一体どういう脚本なんだ?って気になって仕方ないから、脚本目当てで物販コーナーを覗いたけどパンフレット販売だけで残念。紀伊国屋にも熱海殺人事件の書籍は置いてなくて涙。紀伊國屋ホールの公演なんだし、その辺りは置いておいてください~と思いつつ検索したら、つか戯曲はサイトで無料公開されてるとな。太っ腹!台本を読み耽るの楽しすぎる。味方さんなら一人称「アタシ」でも映えるだろうな。一人称「アタシ」が似合う24歳。よい。そんなわけで、味方さんに惹かれて4月末には『リメンバーミー』という舞台も観に行きました。

 

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